念願の140イニング
今シーズン、セ・パ12球団は、それぞれ140試合を戦った。
ということは、投手の規定投球回は140イニングとなる。
先発投手たちは、この140イニングに到達することをひとつの目標にしていると思う。
今回は、はじめて規定投球回に届いた投手を紹介したい。
しかも、自身のシーズン最後の登板でやっとクリアしたという4人だ。
喜びもひとしおだろう。
選手 | 試合 | 先発 | 完投 | 完封 | 勝利 | 敗戦 | 投球回 | 安打 | HR | 三振 | 四球 | 自責点 | 防御率 |
渡辺俊介 | 20 | 18 | 6 | 0 | 9 | 4 | 140 | 114 | 19 | 74 | 31 | 57 | 3.66 |
後藤光貴 | 23 | 23 | 1 | 1 | 10 | 7 | 141 2/3 | 150 | 29 | 91 | 34 | 60 | 3.81 |
小林宏之 | 50 | 14 | 3 | 0 | 10 | 10 | 145 1/3 | 135 | 17 | 117 | 36 | 62 | 3.84 |
平井正史 | 40 | 20 | 3 | 2 | 12 | 6 | 144 1/3 | 132 | 16 | 98 | 25 | 49 | 3.06 |
※・・・2003年シーズンの実際の成績
パ・リーグからは、渡辺俊(ロッテ)、後藤光(西武)、小林宏(ロッテ)の3人。
この3人は防御率ランキングで、7、8、9位となかよく並んだ。
後藤は、リーグ最多の29被本塁打が気になるが、初のふたけた勝利。
シーズン後半から先発に定着した小林も、初の10勝だ。
ふたけた勝利を逃した渡辺は、完封こそないが6完投が光る。
中日の平井は、10年目にして念願の規定投球回到達を果たした。
防御率はリーグ2位。
新人王と最優秀救援投手のダブル受賞した1995年以来の大活躍だった。
以上の4投手は、とくにシーズン終盤にめざましい働きを見せた。
9月、10月の2か月間の成績をとりあげてみたい。
選手 | 試合 | 勝利 | 敗戦 | 完投 | 完封 | 投球回 | スタミナ | 自責点 | 防御率 |
渡辺俊介 | 7 | 4 | 1 | 5 | 0 | 60 1/3 | 8.62 | 20 | 2.98 |
後藤光貴 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0 | 26 | 6.50 | 8 | 2.77 |
小林宏之 | 5 | 4 | 0 | 1 | 0 | 36 1/3 | 7.27 | 20 | 4.95 |
平井正史 | 6 | 5 | 1 | 3 | 2 | 47 1/3 | 7.89 | 7 | 1.33 |
投球回を試合数で割った「スタミナ」を見ると、渡辺は驚異の8.62。
渡辺は最後の5試合をすべて完投。
しかも、9月24日の西武戦は、延長引き分けとなった12イニングをひとりで投げぬいた。
チームの最終戦、10月12日のオリックス戦は、9回1失点完投勝利。
これでちょうど140イニングとなって、執念で規定投球回をつかんだ。
ドラゴンズの山田監督が解任された9月9日、平井がようやく目覚めたようだ。
自身はじめての完投を完封勝利で飾り、恩人へのはなむけとした。
この日を含め、このあと5試合連続勝利。
初完封の感激さめやらぬ9月30日には、無四球完封までなしとげた。
9月は月間4勝で、1995年6月以来の月間MVPを獲得。
シーズン後にはカムバック賞も受賞となった。
9、10月で4試合と後藤の登板試合はやや少ない。
ほかの3人とくらべると、後藤はシーズンを通してローテーションを守っていたといえる。
そのため、最後にそれほど追い込みをかける必要がなかったようだ。
小林は打線の援護もあって、5試合で4勝。
では、4投手のシーズン成績を、いろいろいじくってみたい。
選手 | 防御率 | スタミナ | 被安打 | 与四球 | 安+四死 | 被打率 | 被本塁打 | 奪三振 |
渡辺俊介 | 3.66 | 7.00 | 7.33 | 1.99 | 9.90 | 0.219 | 19 | 4.76 |
後藤光貴 | 3.81 | 6.16 | 9.53 | 2.16 | 11.88 | 0.274 | 29 | 5.78 |
小林宏之 | 3.84 | 2.91 | 8.36 | 2.23 | 10.78 | 0.250 | 16 | 7.25 |
平井正史 | 3.06 | 3.61 | 8.23 | 1.56 | 10.16 | 0.244 | 16 | 6.11 |
※・・・スタミナは1試合あたりの投球回。被安打、与四球、安+四死(被安打と与四死球の合計)、奪三振は9回あたり。被本塁打は140回あたり。
渡辺の被打率.219はあっぱれだ。
松坂(西武)の.230を抜いて、パ・リーグの規定投球回到達者13人のナンバーワンである。
.244の平井は惜しくもリーグ2位。
1位は井川(阪神)で、被打率.242だった。
平井は左打者を苦手にしている。
右打者は.193と抑えるが、左には.295と分が悪い。
ともあれ与四球の少なさには好感が持てる。
140イニングに到達した後藤だが、今年の9回あたりの成績は、過去3年間よりも劣る。
過去3年間の成績を並べてみよう。
防御率2.88 被安打6.43 与四球2.83 安+四死9.46 被本塁打16 奪三振8.59
比較してみると、2003年はずいぶん安打を許すようになってしまった。
被ホームランの異常な増加も気にかかる。
小林の過去3年間の成績も出してみる。
防御率2.96 被安打7.65 与四球3.28 安+四死11.06 被本塁打23 奪三振8.29
小林も過去3年間よりも被安打が増え、奪三振が減り、豪快さが薄れた。
しかし、そのかわり制球力がずいぶん向上したようだ。
こちらは心配なさそうだ。