祐介からしばらくの間、一緒にいても良いという許可をもらった耕治は、綿菓子をねだるかおると共に
駐車場にやってきいた。
 耕治がかおるを肩車して、屋台の前を歩いていると、

「あら、耕治さん。 お好み焼きの屋台が二つもあるんですね?」

 傍らで、出店広告のチラシを眺めていた春恵が、不思議そうな顔をして耕治に訪ねてくる。

「えっ、ああ、お好みのことですか。実は・・・」

 耕治は春恵に二つのお好み屋台になったいきさつを話し始める。

「それで大阪風と広島風になって屋台が二つになったんですね」
 
 春恵が納得したように頷いていると、耕治の頭の上から、かわいらしい声がふってきた。

「まあぁ、こうじおにぃちゃんをひとりじめしたぁ、だぁめなのぉ〜」

「まあっ、このこったら」

「ははは、かおるちゃんごめんね。さあ、次は何が良いかな〜」

「かある、あれがいいのぉ」

 耕治がかおるの指さす方を見ると、どうやらお好みの屋台である。

「そっか、お好み焼きだね♪」

「おこのみなのぉ♪」

「さっ、春恵さんも早く」

 耕治はそう言うと、さっと春恵の手を握り歩き出す。

「えっ、あの、こっ、耕治さん?!(真っ赤)」

 耕治に手を握られた春恵は、真っ赤になって耕治の方を見るが、耕治はそんな春恵の様子に全く気が
ついた様子がない。
 この辺りはまさににぶちん耕治君の面目躍如と言ったところだろうか。

 なんにしても春恵の方も満更ではないらしく、最初の方はとまどったもののやがて引っ張られた状態
から、耕治の横に並んで歩くようになり、傍目にはまさに親子連れといった感じであった。

 耕治は春恵の手を引いて歩いていたが、ふと春恵の方を振り返ると、

「ねっ、春恵さん。 広島風と大阪風があるけどどっちが良いですか?」

 耕治に手を握られて”ぽ〜”となっていたところに、突然話を振られた春恵は、

「えっ? えっ?」

「まあぁ、おかおまっかっか〜」

「かっ、かおる!(もっと真っ赤)」

 そんな春恵を見て、耕治は”クス”と笑うともう一度優しく問い返した。

「お好み、広島と大阪どっちにします?」

「あっ、あの。広島風ってどんなのですか?」
 
「広島風って御存知ないですか? じゃあそっちにしましょう」

 耕治は春恵にそう言うと、少し頭を上に向けかおるにも話す。

「かおるちゃん、広島風を食べようね」

「ひろしまふうだぞぉ」

 どうやらよくわかってないらしいが、とりあえず元気いっぱいの返事が返って来た。
 


 耕治たちは広島風お好みを焼いている、涼子の屋台の前にやってきた。
 涼子の屋台と葵の屋台は二つ列んで設置されており、すでにその前にはかなりの人間が列んでいる。
  
「涼子さんお疲れさまです」

「あら、前田君、それに春恵さんも。いらっしゃいませ」

「かあるもいるぞ〜」

「うふふ、かおるちゃんも、いらっしゃいませ」

 耕治は、涼子に「祐介の許可をもらってしばらく休憩である」旨を告げると、更にお好みを注文すべく
続ける。

「涼子さん、お好みを二ついただけませんか?」

「はいかしこまりました」

「はやく、はやく♪」

 耕治の頭の上からかおるの声がふってくる。

「ちょっと待っててね♪」

 涼子は手慣れた手つきで、耕治たちの目の前で広島焼きを作っていく。
 広島焼きを知らない春恵が、涼子の手つきを興味深げに見守っていると、やがてすぐに焼き上がった。

「はいどうぞ」

 涼子が、できあがったお好みを舟に乗せ耕治に手渡すと、耕治が代金を払おうとしたので、

「前田君、そんなお金なん・・・・」

 涼子が、そう言いかけたときに、耕治はちらと周りのお客に視線をやり、また涼子を見る。

『そうね、お客さんがいらっしゃる中で社員が特別はだめよね』

 耕治の言いたいことがすぐに理解できた涼子は、笑顔で耕治たちに告げる。

「二人前で900円です」

「はい、代金」

 耕治がそう言って財布からお金を出そうとすると、横にいた春恵が耕治に話しかけてくる。

「そんな耕治さん。私が、お払いいたしますわ」

 すると耕治は屈託のない笑みを見せて、

「良いんですよ、俺が春恵さんとかおるちゃんに買ってあげたいだけですから」

「でも・・・」

 まだ渋る春恵に、耕治はおどけるように、

「ほらほら、早くしないとあとがつかえますよ。だから、 ね 」 

「つかえるんだぞぉ〜」

 同じように耕治のまねをするかおるにも促されると、春恵は気持ちよい笑顔で耕治に応える。

「じゃあ、耕治さんのお言葉に甘えますわ」

「はは、そんな大したことでもないですけど」

 耕治達は支払いを済ませると、落ち着いてお好みを食べるためにPiaのフロアに入っていく。

 それを見送っていた涼子が、笑顔で鉄板の上のお好みをてこで

 ”がしがし”

 していた。

「あっ、あのお。お好み焼き細切れになってますよ?」

「何か?(にっこり)」

「いえっ!! なんでもないですぅ(びくう)」



 フロアの中では、ドリンクとデザート類の注文が出来るため、それに対応するべくあずさと、つかさ、
それに今日だけは臨時に早苗も動き回っている。
 
 ちなみにつかさは、”コスプレをする!”と意気込んでいたのだが、皆の反対により却下されていた。

 それでも納得行かず、だだをこねていたのだが、耕治の、

『浴衣姿のつかさちゃんってかわいいだろうなぁ』

により一気に撃沈され今では嬉々として、浴衣を着ていた。

 その後、それを他のメンバーに聞かれた耕治がどうなったかは言うまでもなかろう

 〜閑話休題でした〜                     

 三人掛けのテーブルの空きを探すと、まだ時間も早い為か、そんなに時間をかけることもなくすぐに、
空いている席は見つかり、春恵とかおると三人で腰を下ろした。

「じゃあ、かおるちゃん早速食べようか」

「かある、もうおなかぺこぺこ〜」

「まあ、このこったら。さっき綿菓子をもらったばかりなのに」

「春恵さんもどうぞ召し上がって下さい。広島風ってキャベツのしゃきしゃきっとした歯ごたえが良いで
すし、何より涼子さんのこだわりの逸品”おたふくソース”が、また美味しいんです」

「ふふ、じゃあいただきます♪」

「いたぁきましゅ♪」

 ぱくっ☆

 もぐもぐ

 ごっくん!

「どうですか?」

「ええ! とっても美味しいです」

「おいしいのぉ」

 かおると春恵の、ほっぺが落ちそうになっている幸せそうな顔を見て、耕治も微笑んでいるが、春恵は
ふと自分たちばかり食べていて耕治の分のお好みがないことに気がついた。

「あの・・・、耕治さんは、お好み焼きを召し上がらないのですか?」

「ええ、あまりゆっくりするわけにも行きませんから。あっ、でも俺のことは気にせずどうぞ召し上がっ
て下さい」

 春恵は耕治の顔を申し訳なさそうに見ていたが、ふいにいたずらを思いついた子供のような笑みを浮か
べ、

「そうですわ! このお好み焼きはボリュームがすごくてかおると二人では食べきれないですから、耕治さ
ん手伝って下さいますか?」

 そう言って春恵は、お好み焼きを箸でつまみ、耕治の口元まで持っていった。

「はい、あ〜ん♪」

「えっ!!! っそ、そんな!!!」

 耕治は顔を真っ赤に染めながら狼狽するが、春恵は微笑みながら更に続ける。

「さあ、遠慮なさらないで。あ〜ん」

「じゃ、じゃあ。あ〜ん」

 ぱく☆

 もぐもぐ

 ごっくん

「ふふっ、美味しいですか?」

「はっ、はい・・・(赤)」

「あ〜っ、まあぁずるいのぉ。かあるもしゅりゅ〜。はい、おにぃちゃん”あ〜ん”」

「ありがとかおるちゃん。じゃあ、あ〜ん」

 ぱく☆

 もぐもぐ

 ごっくん

「おにぃちゃん、おいしい?」

「うん、とっても美味しいよ♪」

 そんなやりとりが数回交わされたあと、二つのお皿の上のお好み焼きはやがてなくなり、三人は一息
ついた。

 耕治が何気なく時計を見てみると、祐介に許可をもらってから、もう30分が過ぎようとしている。

「あっ! もうこんなにたってる! 春恵さん申し訳ないですけど、俺、仕事に戻りますね」

「耕治さん、お仕事の最中にわざわざありがとうございました」

「いえそんなこと。また、いつでも訪ねてきて下さい。大歓迎ですよ!」

「では私たちはこれで失礼いたしますね」

 そう言って春恵はかおるを連れて家に帰ろうとするのだが・・・

「ほら、かおる。お兄ちゃんにお礼を言いなさい」

 春恵は、かおるにそう促したが、どうやらかおるは耕治と離れることに納得がいかないらしい。

「やぁーっ。かある、もっとおにぃちゃんといっしょにいるのぉ」

「もう、このこったら・・・。 かおる、お兄ちゃんはこれからお仕事なのよ」

 春恵がそう言ってかおるを窘めるがどうも聞き入れてくれそうにない。

「そうだ! かおるちゃん・・・ゴニョゴニョ・・・」

 耕治が何事かをかおるの耳元で囁くと、さっきまでぐずっていたかおるの顔がとたんに満面の笑みにな
り、耕治に頷き返した。

「うん! ほんと? おにぃちゃん♪」

「ほんと、ほんと」

 かおると耕治のやりとりを見ていた春恵は、耕治が何を言ったのかをかおるに尋ねると。

「えへへ〜、かあるおうちにかえってえ、はやくねるもんね〜」

 春恵は少し困惑気味に耕治の方を向くと、それに気づいた耕治が、かおるにわからないようにそっと
春恵に耳打ちした。

「一杯寝たら、それだけ速くおおきくなれるよって言ってあげたんです」

「そうですか・・・、速く大きくなりたい年頃ですものね」

「ええ、俺もそうでしたから」

 ひとしきり頷きあうと春恵は耕治に、これで帰る旨を告げる。

「じゃあ、耕治さん私たちはこれで失礼します。お仕事の方頑張って下さい」

「ありがとうございます。お送りすることは出来ませんが、春恵さんも気をつけてお帰り下さい」

「今日はありがとうございました」

「こうじおにぃちゃん、じゃあねぇ」

「かおるちゃんもさようなら」

「さあ、かおる、帰りましょう」

 そうしてかおると春恵の二人は帰途についた。
 
 耕治は二人を見送ると、更衣室に戻り、はっぴを着たあと、再びねじりはちまきを締め直し会場に戻っ
ていった。


さあ、祭りはまだまだ続く、これからが本番である!




 Project「リレー小説☆ぴあぴあ」Presents

  第七話「お祭り騒ぎも良いものでしょ♪」

 Written by と〜し




 二人と別れた耕治はとりあえず屋台村の方に足を運ぶ。

 すると、すでに屋台村の方は黒山の人だかりになっている。

「あちゃあ、ちょっとゆっくりし過ぎたなあ」

 しかし、よく見てみると人が一杯になっているのはキャロットの屋台の方であり、プロの屋台の方はそ
うでもないようである。
 
 まあ、むさ苦しいおっちゃんが作っている屋台の食べ物と、かわいい女の子達が作っている屋台の食べ
物、どっちが客にアピールできるかなど考えるまでもないのだが・・・。

 大慌てで屋台の裏へかけていくと、早速焼きそばを焼いている潤から声がかかる。

「耕治、遅いよ。何やってたのさ!」

「わりぃ、神楽坂! すぐ手伝うよ」

 耕治は、潤に声をかけながら、自分のはっぴにもたすき掛けをすべく、帯を取り出して器用に結んでい
く。

「とりあえず、ここは良いからお好み焼きの方に行って! もう材料が厳しいみたいだよ」

「お好みの方だな! わかった!」 

「そうそう! 耕治」

「なんだよ?」

「こっちの方も、野菜関係が危なくなるかもしれないから、念のために用意しといてもらえるかな?」

「野菜関係だな、よし! まかせとけ!」

「あっ、でもこっちはそんなに急がないから、先にお好みの方に行って上げて」

 耕治は、潤に頷くと早速棟続きのお好み屋台の方に向かって行く。
 

「焼きそば下さい」

「あっ、はい! ありがとうございます」

「こっちも二つ下さい」

 耕治の方を見ていた潤であったが、横からお客の声がかかる。
 潤の屋台も忙しくなりそうだ。


 お好み屋台に来た耕治だが、ものすごい人である。
 涼子と葵はひたすら焼くことと売ることに追われている。

「葵さん! 涼子さん! 材料あとどれくらい要りそうですか?」

 すぐに耕治に気がついた葵が待ってましたとばかりに耕治に声をかける。

「あっ、耕治君! 良いところに来たわ〜。あたしは、とりあえず一箱分お願い!」

「涼子さんはどの位ですか?」

「私もそれで良いわ。お願いね!」

「わかりました、すぐに切りますね!」

「「頼んだわよ、『キャベツ千切りマスター』♪」」

「その呼び名はやめて下さいよ〜 (T_T)」

 二人の、ぴったり息のあった呼び方に耕治は”るるる〜”っと涙を流しながら厨房へ向かおうとするが、
後ろから、葵の声がかかる。

「耕治君、あと例のモノもよろしく〜」

「ええ〜、あれですかあ?」

「そうよ、お祭りには”あれ”がないとね♪」

「しょうがないなあ、葵さんは」

「いいの、いいの。それがあたしなんだから」

 口では呆れながらも、葵らしいと思った耕治はすぐに了承すると、キャベツに挑むべく厨房に走って
いった。
 
 葵が、再びお好みに挑みかかろうとすると、すぐ横の屋台では涼子が、鉄板の上のお好みをてこで、

本日2度目の”がしがし”をしていた。

「りょ、涼子? お好み焼き、粉々になってるわよ?」

「ふふふ、なあに?」

「いっ、いやーんな感じ」



「よおし、やあってやるぜ! うりゃあ」

 気合い一閃、包丁を振りかざし目の前に積まれたキャベツに耕治が挑みかかる。

 だだだだだだだだだだだだだだだだ。

「よし、つぎ!」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダ。

「よし、つぎ!」

 DADADADADADADADA。

「つぎっ!!」
 

 ひとしきり切り終えて、汗を拭いながら一息つくと、耕治は、思い出したように呟いた。

「あっ・・・、よく考えれば、わざわざ包丁で切らなくても、この厨房にある巨大”すらいさー”を使え
ばよかったのでは・・・(汗)」

 そう、このキャベツキリは本来、耕治が包丁の勉強をするために料理長が課した課題であった。
 
 ある程度まで包丁が使えるようになった今となっては特に包丁でキャベツ切りをする必要もなくなって
いるのである。
 
 と言うより、このせっぱ詰まった忙しいときには、包丁で切るより”すらいさー”を使った方が良いと
も思える。

「はっ、ははは・・・。いっ、良いんだ、包丁の方が、機械には出せない味が出るんだから・・・」

 耕治が自分を慰めていると柱の陰では料理長がその光景を覗いていた。

「うんうん、成長したな耕治君・・・。君は仕込みの神髄を悟ったようだ・・・(感涙)」

 その後更に数個のキャベツを刻んだ耕治は、潤の焼きそば用の材料も刻んで屋台に向かっていった。
 
 もちろん葵の依頼の品を忘れてはいない。

「ちょっと、調子に乗って切りすぎたかなあ」

 キャベツの入った大きな袋を3つも抱えて、耕治は誰に言うでもなく呟いたが、

「まあ、お客さんが大勢いることだし、良いよな」

 とりあえず自己完結して、潤の屋台にそのうちの一つを置きにいく。

 すると、潤の屋台の前も、先ほどより更に人が増えたような感じがする。

「潤、さっき言ってた焼きそば用の野菜ここに置いておくぞ」

 ひたすら焼きぞばを焼くことと売ることに追われている潤は、耕治の方をちらと振り向くとすぐに焼き
そばに集中し始める。

「そこに置いといて!」

 耕治は、潤が一瞬振り向いた時に何か鬼気迫るものを感じたのか、

「あっ、あの・・・。がんばってね・・・(汗)」

 それだけ言うとお好みの方に駆けていった。

 

「葵さーん! 持ってきましたよー」

 耕治が、大きな袋を葵に見せると、葵は、材料の方にはさして興味を示さず

「そんなのより〜、アレは、ア・レ?」

「あはは、ちゃんと有りますってば!」

「でかしたわ! さすが私の耕治君!」

 葵はそう言うと、耕治の頭を脇に抱え込み、ぐりぐりとなで始める。

「葵さーん・・・。やめて下さいよう」

 口ではそう言ってはいるものの、やっぱり耕治も男の子である、ちょっと鼻の下がのびている。
 
「ふん! ずいぶん仲が良いぢゃない・・・ぐびぐび」

 耕治と葵のじゃれあいを見た涼子は、さっと耕治の持つビールをひったくると、すごい勢いで飲み始め
た。

 例の”涼子の飲むスピードによる心理分析”により、涼子のスピードがレッドゾーンに到達するやばい
勢いだと判断した葵は、
 
「そっ、そ〜だ、耕治君! 涼子一人だと大変だから、手伝ってあげてくれない?」

 葵の目配せで、涼子の状態が、臨界に達する直前であることを悟った耕治は、 

「そうですね。涼子さん手伝いますよ。何でも言って下さいね」

「あら、耕治君は葵と仲良くやるんじゃないの?」

 先ほどの春恵との一件もあるせいか、まだ根が深そうであるが、耕治の、

「いえ、俺が涼子さんを手伝いたいんですよ」

 の一言で機嫌はすっかり直ってしまった。

『まあったく、現金なものね』

 葵は半分呆れたように親友を見ていたが、景気づけにビールを一本ぐいっと空けると、すぐに自分のお
好みに取りかかる。

「さあ! 広島焼きなんかに負けないわよ〜」

 すると隣の屋台から涼子の声が飛ぶ、

「私と耕治君の広島焼きが、負けるはずないじゃない♪」 

「ホントに現金ね・・・、酔ってるのかしら(汗)」

 しばらくジト目で涼子を見ていたが、葵の屋台の前にも涼子の屋台の前にも、お好みを求める人が列ん
でいる。
 どうやら当分は焼くことに追われそうだ。

「おねいさん、お好み二つ」

「あっ、はいは〜い」

 応えた端からすぐに注文が来る

「こっちも二つね〜」

「は〜い! ちょっと待って下さいね〜」 
 

 


 綿菓子を作る美奈、焼きそばを焼く潤、お好みを作る涼子・葵も、またフロアにいるつかさ、あずさ、
早苗たち、それぞれが喧噪の仲で”Piaキャロット2号店秋祭り”の夜を過ごしていく。 
 
 キャロットの秋祭りは大盛況のうちに幕を閉じようとしていた。
 


                  













 そのころ・・・




 秋風が吹くキャロットのマネージャー室では、店長木ノ下祐介の伸ばした髪の毛が、風にたなびいてい
る。
 いつまでも落ち込んでなんかいられない。
 自然と気合いが入ってくる。

「よーし!」

 祐介は、”ぱしぱし”と自分の頬をはたいて気を取り直す。
 これも”男のろまん”かな、どこかでそう思いながらも思いついたことを口にする。
 このすばらしい祭りの雰囲気が言わせたのだ。
 そう思うことにして・・・

「木ノ下祐介、復活!」

 そして祐介は屋台村に飛び出す。

「みんな〜、がんばってる? 手伝いに来たよ〜」

「あれ?・・・」

 そう! 祭りは大盛況のうちに終わったのである・・・ 


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