実験演習初日。

「これが……新しい霊子甲冑ですか?」

新部隊の霊子甲冑を見たさくらは驚いた。
さくらたち花組が搭乗していた『光武』タイプとはまったく形状の異なるモノだったからだ。
新型の霊子甲冑は人型ではなかった。飛行機に手足を無理やり取り付けたような代物だった。

「ああ、そうだ。この霊子甲冑は空を飛べるんだ」

鳴滝が補足するように言う。

「そ、空をですか!?霊子甲冑が!?」

再び驚くさくら。
さくらが驚くのも無理は無かった。
この太正時代、飛行機はあったものの、今だ短距離飛行がやっとの時代だ。
まして、霊子甲冑に使われるシルスウス鋼は他の金属より遥かに重い。
機械に疎いさくらでもこの霊子甲冑が前代未聞の代物であることはよくわかった。

「以前の降魔との戦いを覚えているだろう? 降魔は空を飛べた。
 またあのような敵が現れた時の為に開発されたらしい」

「詳しいんですね、鳴滝さん」

「いや、私も君たちのメンバーの…李紅蘭さんだったかな?彼女から聞いたことなんだがね」

「やっぱり紅蘭も開発に関わっていたんですか?」

「と言うよりも彼女の企画、設計の元に作られたようだね。彼女は制作総指揮というわけだ」

「う……ちょっと不安かも…」

「なに、大丈夫さ。あの激戦をくぐり抜けてきた『花組』ならね」

「いえ、私は紅蘭が作ったことが…」

「楽しい会話の邪魔して悪いでーすけど!」

突然の背後からの怒声にさくらは驚いて後ろを振り返った。

「お、織姫さん!?どうしてここに?」

織姫は無造作に腕を上げて手に持った書類を2人の前に掲げる。

「ソレッタ・織姫。これより2週間の新型霊子甲冑の実験演習の参加を命ずる……これって?」

「そーよ、ワターシもこの実験に参加するんでーす。よろしくね、さくら」

「あ、あれれ? でも、確か織姫さんは…わわ!」

織姫は突然さくらの手を取るとこちらに引き寄せた。

「さくら、気を付けることでーす。
 こんな男に近くにいたらどんな目に合うかわかったもんじゃありませーん!」

「お、織姫さん…」

さくらは複雑な表情で左右の2人の顔を交互に見た。
あの時ほどではないにしても、やはり怒りの表情で鳴滝を睨む織姫。
何事も無かったかのように薄く笑顔で2人を見つめる鳴滝。

(紅蘭……本当に黙ってていいの……?)

板挟みになりながらさくらは苦悩していた…
 
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