はじめに
資本還元将棋とは、私が考案した変則将棋で、「持ち駒が5枚になると負け」という極めて簡単なルールである。ここでは資本還元将棋の基本手筋や格言を紹介し、「どうしたら上達するか」ということにポイントを絞って進めてゆきたい。資本還元の魅力をより多くの人々に伝え、ゆくゆくは大会などが主催され、ソフト会社が「これは面白い」と目を付けてゲーム化し、私の懐に幾ばくかのお金が入ってくればこれに勝る喜びはない、と思う次第である。
1 ルールのおさらい
資本還元は冒頭で書いたように「持ち駒が5枚になると負け」だが、無論普通に詰まされても「負け」である。そうでなければお互いに駒を取らずに指し続け、勝負なんかつかない道理である。要は「その他のルールは全て指し将棋に準じる」わけである。
2 このゲームのポイント
相手に駒を沢山持たさればいい訳であるから、ともかく駒を捨てることを心がけるべきだ。そうはいっても、何の考えも無く捨てまくっては、単に駒損して不利になり「普通に負けてしまう」ハメになるので注意が必要である。
もう一つのポイントは、自分の持ち駒を如何にうまく消費するかである。折りを見て持ち駒を打たないと、あっとゆうまに寄せられてしまうというのが、この将棋の怖さである。
それでは以下に、資本還元将棋の役に立つ格言を紹介し、資本還元の基本手筋について解説しよう。
役に立つ格言コーナー
その1 「歩は突き捨てよ」
よく「開戦は歩の突き捨てから」「将棋は歩から」「歩のない将棋は負け将棋」などといわれ、とかく歩の重要性が指し将棋の世界では語られるが、資本還元でも歩の重要性はひけをとらない。ただしこちらは「如何に相手に歩を持たせるか」「こちらの歩を消費するか」というところにポイントが絞られる。いわば、代表的な邪魔駒なのである。
歩さえ取らせてしまえばシメシメ、といった感じである。ことに、こちらの歩は切れているが相手の歩が残っているという状態が理想的だ。もし相手の歩がどの筋でも切れてないとすれば、相手は歩を消費したくても「どこにも使えない」という状態になる。
A図をご覧頂こう。今、先手の6筋の歩が切れていたとしよう。ここでの手筋は62歩である。一歩を消費しての金取り。放置すれば金が手に入る。取る手は持ち駒が増えるので、相手は52金とかわすかもしれない。そこですかさず61歩成。今度は王手である。同玉と取れば相手の持ち駒の増加に成功した上、再度の62歩から61歩成が待っている。例えかわしても、51とのすり寄りがあっては、いつまでもかわし切れるものではない。
歩の「突き捨て」と「たたき」、「から成り」は、資本還元においての基本手筋であるが、その威力と応用範囲は広い。
その2 「大駒は近づけて打て」
格言に「大駒は近づけて受けよ」とある。普通に合駒したのでは相手に手番を渡し寄せられてしまう時にも、この格言で危機を乗り切る事ができるが、資本還元においても同様だ。ただしこの場合は、敢えて「近くから打て」という教え。
B図を見てみよう。もしここで11飛とでも打ったらどうなるか? すかさず21歩と打たれ、敵の持駒を減らす機会を増やしてしまう。この歩を相手にするのはしゃくだからと、12飛成と成りかえっても、さらに32歩などとされ「お手伝い」になってしまう。結局、どれか歩を取らない限り飛車が「おじさん」になってしまうのだ。従ってここでの着手は41飛とくっつけて打つのが正解。相手に合駒を打つ隙を与えないための隠れた好手である。
その3 「持ち駒3枚は危険と知れ」
資本還元初心者の人は、指し将棋の常識が抜けないせいか、つい持ち駒を持つ危険性を忘れてしまう。歩の突き捨てをうっかり取って、3枚目に突入する場面もよく見られる。無論局面にもよるのだが、持ち駒が3枚あると、すでに終っているというケースは多い。
今度はC図。今45桂と跳ね出したところ。角取りで、本将棋なら当然「同歩」と取る局面だが、資本還元ではどうか? 何しろ現在後手の持ち駒は2枚。桂を取ると3枚の「危険状態」になってしまう。
45同歩と桂を取ったと仮定しよう。先手の次の手は33角成。同桂・同金、いずれの応手も42角で後手の負けだ。後手はこの時点で持ち駒4枚なので、この角を取ることができない。以下61玉に51角成、72玉、73馬で「オワ」である。
従って33角成には持ち駒を消費する42桂合の一手だが、同馬、同金左、62角で、結局受からない。遡れば45桂を取ったのが敗着だったということだ。