さて、そんな事をしている内に、決戦の時が来た。 ベイラグーン埠頭に行かなくてはならない。ちなみに難波はバイトが忙しくて遅れるそうだ。 やっぱり。
ちょっと時間オーバーを気にしつつ、ベイラグーン埠頭に到着。もう既にみんな集まっているみたいだ。 今日は藤沢の同棲相手である川志摩葵という女もギャラリーとして来ていた。 うーむ、川志摩葵…どう見ても藤沢とは釣り合わないような、オトナの女だ。 同棲……まさかヒモ!? こ…これは怪しい。大体一晩中遊び歩いていて、昼間まともな仕事をしているわけがない。 そのくせあんな高級マンションに住んで、金に困っている様子はない。 当たらずとも遠からず…か。ふと、難馬が可哀想だと思う私であった。
葵は氷川丸の所で翔と話していたが、何故か前から知っているような態度を取る。 あの謎めいた態度…なんだかちょっと気になるなぁ、彼女は。
辻本「今回の事はすまなかった。全て、俺の責任だ。2度と起きないようにする」
謝るのはいいが、石川兄弟を警察に突き出す方が先なんじゃないか? あれは立派な犯罪に違いないと思うんだが…。
藤沢「それは済んだ話だ。言い訳を聞きに来たんじゃない」
沢木「おう! オレ達にはオレ達なりの解決手段があるよな!それがK・T・H!」
…いつから走り屋が治外法権を持てるようになったんだろうか。 大体、K・T・Hってなんだ。
沢木「清き正しき走り屋道ってもんだ!」
いや、悪かった、心置きなくK・T・Hを貫いてくれ。
辻本「勝負は一度きり。俺と藤沢のTAIMAN−BATTLE…… どっちが勝っても、チームとして結果は真摯に受け止める」
沢木「恨みっこなし!走りが全て!それがオレ達のやり方! おう赤碕!オレ達が前哨戦だ! ただのエキシビジョンレースだと思うな!お前に本当の走りってもんを教えてやる!」(!×7)
藤沢(………)
辻本(…恥ずかしい奴だゼ…)
翔(…うるせえ野郎だ…)
あ、今三人の心の声が聞こえたような気がしたぞ。
翔「なぜ俺を対戦相手に選んだ……?」
沢木「お前は走りをわかってねえ!見込みあるのによう!」
しつもーん!「走り」っていうのは、みっつのKとか、K・T・Hとかの事でしょうか? それならば、既に十分過ぎるほどわかってはおりますが… 残念ながら凡人には到達不可能な境地ですので、あまり期待してもらっても困ります。
さて、いよいよ沢木との決戦なわけだが、今私のノーズには、3.8リッターOHVが収まっている。 沢木とのバトルに備えて、翔がアメ車から強奪したものだ。 クソ重いし今時OHVだが、30kgを軽く超えるトルクは大きな武器だ。 Eco…?そんな言葉は知らないさ…。
…そしてレースは始まった。 流石はアメ車の心臓。軽ワゴンのシャシーでも直線で難なく200km/hを超える。 でも、それは重心が高いので危険だと思う。エルクテストもクリアできまい。 まあ速い事は速い。沢木のSil-14をスタートダッシュで置き去りにし、そのまま差を広げる。 そのまま2週目に入り、しばらくして…
辻本「沢木ーーーーーー!!! なにやってんだああああ!!!」
辻本の悲痛な叫びが響く。
…沢木のSil−14は燃えていた。突然前輪がロックし、そのままコントロールを失って…
藤沢「辻本ーーーー!離れろ!危険だ!! おい!誰か!!救急車!!」 辻本「畜生!! 馬鹿野郎!! 大馬鹿野郎……!!」
大丈夫だ辻本!沢木は死んだりはしないぞ! デートもせずに死ねまい。
思わぬ形で組まれたこのバトルは、思わぬ形でその幕を閉じたのであった。
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