くう…こんな辱めを受けるとは思わなかった。 さっきまでさんざ馬鹿にした除雪車に、今自らがなろうとは…。 しかも空気抵抗増えてるし! 翔、貴様…事故ってやる!いつか絶対事故ってやるぞ!
しかし…この姿でバスを襲うところなど、とても走り屋とは思えんな。 ただでさえ、今まで略奪の限りを尽くしてきたというのに。 …本性が表に出てきたというところか?
いや、バスならまだいいが、銀行のステッカーを貼ったワゴン車 は、いくらなんでもマズいだろう。しかもMoney-Bagを奪ったりして…
NothYokohamaへ行きがけに、GSミラージュへ寄る翔。 おい、このエアロのまま行くのか?知らんぞ…。
さぞかし奇妙な顔をすると思いきや、難馬は深刻な顔付きで相手にしてくれない。 ほんの僅かに、がっかりしている様子が見て取れる翔。ウケを狙っていたのか…
難馬「いいよな〜。お前は走る時間があってよ〜」
はあ…と言うよりかは、こいつにはそれしかないんです。
難馬「おれはバイトがあけないと練習もできないからさ、 空いた時間でSEVENの整備とイメージトレーニングってやつだ! おれ、今度の横浜GP、絶対出場すんだ〜。あとがねえからよ〜、おれ。 いつまでもちゃらちゃらしてらんねえしな」
翔「……難馬さん…………」
安心せよ難馬!いつまでもちゃらちゃらしている見本がいるじゃないか! そう、藤沢一輝! お前も養ってくれる女がいれば大丈夫さぁ!
難馬「おめえには、まだわかんねえかもな〜。走りはじめたばっかだしな」
難馬は翔を誘って店の前の歩道に出て、立ち話をし始めた。 こら、サボるんじゃない!早くGSせんか!
難馬「おれさ〜、走り屋の兄貴がいたんだ。10年前に事故って死んじまったんだけど。 おれが中坊の頃でな。兄貴はSAVANNA乗ってて渋くてかっこよくてな」
…血は争えんか。
翔「……そんな話、はじめて聞いたな」 難馬「兄貴にあこがれて、おれも走り屋になった。 …いや、そうじゃねえか…なにが兄貴を夢中にさせたのか理解したくてなぁ。 おれたち家族から、兄貴を奪ったもんがなんだったのか知りたかった……それがほんとのところかもしれないな」
だんだんと車道に出ていく難馬と翔。危ないって、おーい!
難馬「しばらくはおれも夢中だった〜。兄貴のことなんか忘れて走りにとりつかれてなぁ。 バイトと車にあけくれて……気付いたら、おれも兄貴と同じ年になってたんだ。 最近、見えるんだ…。兄貴のSAVANNAがおれのSEVENの前を走ってる…。 どこまで走っても、おれは兄貴に追いつけやしない…」
追い付いたらヤバいんじゃないのか?
難馬「兄貴は……もういいんだ、やめろ、ってな、言ってるんじゃないかと思うんだ。 同じところへは来るんじゃねえ…ってな」
翔「…それが…難馬さんの知りたかったこと…?」
難馬「完全にはわからないさ。兄貴の車の前には、なにが走っていたのか… だけどな、おれは兄貴にはなれないし、今なら……走りを辞めることができる。 少なくとも、おれは兄貴より長く生きることができるんだ。それがよう………答えみたいなもんだろ。
兄貴が当時使ってたTuneShopがあってよ。最後にそこでTuneしてもらいたくてな…… 金貯めてたんだけど、明日が本番じゃ間に合わねえもんな……。
なあ、赤碕…おれがこんな話したからって、明日の勝負手を抜くなよ…… 男は同情なんかされたらおしまいだからな………」
こんな話をしといて、そりゃあ無理ってもんだろ。
Noth YKからの訪問者は、桜木町GTだけではなかったようで、三原葉子が属する元町Queen’sも、高島VRというところから挑戦を受けたらしい。 で、翔より一足先にNoth YKに向かったという話だ。 ふむ…かなり面白い事になりつつあるみたいだ。 やはりみんな、横浜GPに向けて殺気立っているのだろうか?
工事の終わった高速を使ってNoth YKへ。 降りるとすぐに、怪しげなクルマに出口を塞がれた。 あー…そういや宣戦布告されていたんだっけ、桜木町GTに。 行く先々で妨害を受け、気が付くと大量の族車に囲まれていた。この街の治安って…。 とにかく、ゼロヨン勝負をせねば開放してもらえないようである。
…まあいいや、どうせ端から見れば、族同士の抗争だしな。(←なげやり)
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