4thNight
StarFallNight


-3-



くう…こんな辱めを受けるとは思わなかった。
さっきまでさんざ馬鹿にした除雪車に、今自らがなろうとは…。
しかも空気抵抗増えてるし!
翔、貴様…事故ってやる!いつか絶対事故ってやるぞ!

しかし…この姿でバスを襲うところなど、とても走り屋とは思えんな。
ただでさえ、今まで略奪の限りを尽くしてきたというのに。
本性が表に出てきたというところか?

いや、バスならまだいいが、銀行のステッカーを貼ったワゴン車
は、いくらなんでもマズいだろう。しかもMoney-Bagを奪ったりして…





NothYokohamaへ行きがけに、GSミラージュへ寄る翔。
おい、このエアロのまま行くのか?知らんぞ…。

さぞかし奇妙な顔をすると思いきや、難馬は深刻な顔付きで相手にしてくれない。
ほんの僅かに、がっかりしている様子が見て取れる翔。ウケを狙っていたのか…

難馬「いいよな〜。お前は走る時間があってよ〜」

はあ…と言うよりかは、こいつにはそれしかないんです。

難馬「おれはバイトがあけないと練習もできないからさ、
空いた時間でSEVENの整備とイメージトレーニングってやつだ!
おれ、今度の横浜GP、絶対出場すんだ〜。あとがねえからよ〜、おれ。
いつまでもちゃらちゃらしてらんねえしな」


「……難馬さん…………」

安心せよ難馬!いつまでもちゃらちゃらしている見本がいるじゃないか!
そう、藤沢一輝!
お前も養ってくれる女がいれば大丈夫さぁ!

難馬「おめえには、まだわかんねえかもな〜。走りはじめたばっかだしな」

難馬は翔を誘って店の前の歩道に出て、立ち話をし始めた。
こら、サボるんじゃない!早くGSせんか!

難馬「おれさ〜、走り屋の兄貴がいたんだ。10年前に事故って死んじまったんだけど。
おれが中坊の頃でな。兄貴はSAVANNA乗ってて
渋くてかっこよくてな」

…血は争えんか。

「……そんな話、はじめて聞いたな」
難馬「兄貴にあこがれて、おれも走り屋になった。
…いや、そうじゃねえか…なにが兄貴を夢中にさせたのか理解したくてなぁ。
おれたち家族から、兄貴を奪ったもんがなんだったのか知りたかった……それがほんとのところかもしれないな」


だんだんと車道に出ていく難馬と翔。危ないって、おーい!

難馬「しばらくはおれも夢中だった〜。兄貴のことなんか忘れて走りにとりつかれてなぁ。
バイトと車にあけくれて……気付いたら、おれも兄貴と同じ年になってたんだ。
最近、見えるんだ…。兄貴のSAVANNAがおれのSEVENの前を走ってる…。
どこまで走っても、おれは兄貴に追いつけやしない…」


追い付いたらヤバいんじゃないのか?

難馬「兄貴は……もういいんだ、やめろ、ってな、言ってるんじゃないかと思うんだ。
同じところへは来るんじゃねえ…ってな」


「…それが…難馬さんの知りたかったこと…?」

難馬「完全にはわからないさ。兄貴の車の前には、なにが走っていたのか…
だけどな、おれは兄貴にはなれないし、今なら……走りを辞めることができる。
少なくとも、おれは兄貴より長く生きることができるんだ。それがよう………答えみたいなもんだろ。


兄貴が当時使ってたTuneShopがあってよ。最後にそこでTuneしてもらいたくてな……
金貯めてたんだけど、明日が本番じゃ間に合わねえもんな……。


なあ、赤碕…おれがこんな話したからって、明日の勝負手を抜くなよ……
男は同情なんかされたらおしまいだからな………」


こんな話をしといて、そりゃあ無理ってもんだろ。





Noth YKからの訪問者は、桜木町GTだけではなかったようで、三原葉子が属する元町Queen’sも、高島VRというところから挑戦を受けたらしい。
で、翔より一足先にNoth YKに向かったという話だ。
ふむ…かなり面白い事になりつつあるみたいだ。
やはりみんな、横浜GPに向けて殺気立っているのだろうか?


工事の終わった高速を使ってNoth YKへ。
降りるとすぐに、怪しげなクルマに出口を塞がれた。
あー…そういや宣戦布告されていたんだっけ、桜木町GTに。
行く先々で妨害を受け、気が付くと大量の族車に囲まれていた。この街の治安って…。
とにかく、ゼロヨン勝負をせねば開放してもらえないようである。

…まあいいや、どうせ端から見れば、族同士の抗争だしな。(←なげやり)




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