あれから三日がたち、いよいよ明日は横浜GPの予選だ。 ただ、せっかく勝ち取った出場権なのに、翔はどうも今一つ気が乗らないようだ。 その原因は、やはり難馬だろう。ヤツはあの代表決定戦以来、行方知れずなのだ。 GSミラージュのオヤジの話では、何の連絡もなしに突然姿を消したらしい。 たかがレースに出られないくらいで、そこまで思い詰めるかな。走りだけが人生の… ・・・全てなんだろうな。
顔はともかく、難馬はまだ二十歳だぞ。若い身空で人生に見切りをつけてしまうとは。 「男はいつだって見栄で生きている。同情されるのはまっぴらだ」 その言葉通り、死に場所を探しに行ったのだろうか? 恐るべしK・T・H。(厳しく辛い走り屋道) 難馬もそうだが、藤沢も辻本も、肩に力が入りすぎていないか? もう少し気を楽に持ったってバチは当たらないぞ。 遅くても明るく生きている健三が、偉大な存在に思えるのは私だけなのだろうか。
街をうろついていると、名もなき走り屋達が次々に襲い掛かってくる。 皆、翔を倒して名を挙げようとしている。ふむ…翔も有名になったな。 悪事千里を走るってやつか? そうであるとは限らんが、今までが今までだからな… 一体どれだけのパーツを奪ってきた事やら。 せんろっぴゃくはちじゅうまんえん という所持金が、この男の所業を物語っている。 難馬も地道にバイトなんかするより、こっちで稼げば良かったのに。
パーツ狩りがてらにベイラグーンタワー付近を流していた時、ふと異様な気配が。 …凄まじいエンジンパワーに路面が引き裂かれるようなスキール音。 それは後方から現れ、瞬く間に視界から消えた。
翔「化物だ…あの車」
化物…ね。お前も私をそれに近い形にしてるだろうが。 いい加減に族車エアロ取ってくれぇ!
茫然としてタワーの前に私を止める翔。 これまで性能で勝ってきただけに、ショックも大きかろう。 …と、そんな事を考えていた、ちょうどその時だ。 真紅に塗られた新旧3台のSEVENが、いきなり私を囲んで急停車した。 そして、一般に言うところのジェイソンマスクをかぶった男(…だと思うが)が窓を開け、
「ケケケッ!!BLRの横浜GP代表の実力、試させてもらうぜ」
…有名になるのも考え物だな、翔。
|