7thNight
DeepRain


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夜のGSミラージュ。アスファルトの路面を激しく雨が叩く。
BLRのメンバーは今夜はここに集まっていた。
…屋根のある場所なら、他にいくらでもありそうなものだが。
怪しげな改造車で乗りつけたら商売の邪魔だと思うけど…。


待合室の中は、重苦しい雰囲気に包まれていた。
そりゃあそうだろう。知り合いを一晩のうちに2人も亡くせば、誰だって明るくしてはおれまい。


由佳「ねっ! みんなっ!ほらっ! 元気だして! これ見てよっ!」

この空気に堪えかねたのか、不自然に声を弾ませた由佳が、テーブルの上の新聞を指す。
健三の愛車みたいな、注目度だけは高い色使いのスポーツ新聞。
その一面には、横浜GP予選結果!!という文字が踊っている。
ええ?そんなにメジャーなネタなのかっ?…と思ったら、左上の方に「横浜スポーツ」とある。
なんだ、やっぱりローカルネタか。
しかし330万も人がいて、もっと他に話題はないのだろうか…。

由佳「見てっ見てっ!藤沢先輩の名前がこんなに大きく!!」

なるほど、中央やや左のカコミに、藤沢の顔写真が載っており、「最速の男藤沢一輝余裕の観戦」などとコメントが添えてある。

由佳「あっ!! 赤碕の名前も出てるよっ。 ほら、そのまんなかのところ。
『横浜GP本選!!期待の新星』だって」


それはいいが…予選1位より、見てただけの藤沢の扱いが大きいのは納得いかん。
に、しても「走り屋の祭典」とは…。いつからこんなに走り屋の地位が向上したんだろうか。


健三「ん!! ちょっと待った!!」

しげしげと紙面を眺めていた健三が、間に割って入る。
どうした?間違ってもお前の記事はないと思うが…。

健三「この記事…………難馬さんの事故のニュースじゃんか……」

おお、確かに、下の方に、「走り屋事故続出」という見出しの記事がある。
横浜GPの盛り上がりと同調して過熱した走り屋同士の公道レースから、多くの犠牲者が生まれているという内容だ。
難馬のdivingも、その事故の1つとして簡単に紹介されていた。

由佳「興味本位の記事…………やな感じ。 もういいよっ!やめよ」

そうか?スポーツ新聞にしては冷静な内容に見えるぞ。

「死へのDRIVE! 過激なTUNEUPが影響か?」
という文に、記者の非凡なセンスを感じる。
もっとも、私は横浜GP云々より、パーツの奪い合いに原因があると見ているが。

「ちょっと待て……この隅の記事………」

それまで無言でいた翔が、珍しく自分から口を開いた。
そこには「10年前の悪夢の再現……?呪われた『横浜最速伝説!』」
と見出しを付けられた記事が、件の事故と関連付けられる形で載せられていた。
それによると、10年前にも走り屋の事故が多発した時期があり、その時存在した正体不明の走り屋の話が、「横浜最速伝説」と呼ばれるようになったらしい。

こうなると話が妙な方向に行くのは、人類共通だったりする。

由佳「たたりみたいなものなのかなっ? あるじゃないっ…
道路にまつわる
怪談とか霊体験とか……」

オマエも十分興味本位じゃねーか!由佳!

「難馬さんは、俺に……【声】が聞こえるって……言ってた。【声】からは逃れられないって……。
なんの意味があるのか……わからねえけど……」


藤沢「憶測でものを言うのはやめろ!! 『横浜最速伝説』と難馬の事故に関連性などあるはずがない。
あるのはただ一つの事実だ。難馬とはもう2度と走れない……アイツはもう……オレ達の側にはいないんだ……」


いや…そうとも限らないぞ。ほら…お前の後ろに難馬が……
ぎゃーーーっ(楳津かずお調)


その時、雨粒のカーテンを突き破り、漆黒のSW2000がドリフトしながらGSに入ってきた。
普通に入ってこい。ドリフトせねば曲がれんのか、こやつら。
ウインドゥが降りて、真っ赤なバケットシートに身を置いた、眉のない男……

ああ…また変なのが…




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