わざわざ豪雨の中現れた黒いSW2000。 そいつは箱根DRIFT DANCERS(以下箱根DD)の加東源児と名乗った。 くそっ、簡単に変換できないような字を使うんじゃない!…こっちの話だが。 走り屋の間では、「三京の黒い悪魔」と呼ばれているらしい。 峠のチームなのに…三京の悪魔…か?よくわからんな。 まあ、とにかく刺客だ。刺客となれば受けて立つのが義務というもの。 しかし、藤沢は走るつもりはないと、つれない態度だ。 せっかく遠いところをご足労いただいたのに…。
しかぁし!ここで最近ちょっと調子に乗っている翔が、替わって走ると言う。 ふむ、正解だ。こういう不安定な路面でこそ、魔法の4WDと呼ばれた、このアテーサET−Sが真価を発揮するというもの。 時速300qで料金所を駆け抜けた時、悪魔は影も形も見えなかった。
翔「たいしたことないな」
しばらくしてやってきた加東に対する、翔の第一声がこれだ。 最近…いや、最初から偉そうだよな、この男は。
翔「三京の黒い悪魔……あんたのことだろ?」
加東「ヘッヘッ……直線は気持ちいいだろ。踏んでりゃいいからな。 関東は楽でいいぜ。馬鹿でも走れる。ステアもいらねえ」
…箱根は関東じゃなかったのか?知らなかった。
翔「負け惜しみは見苦しいな……悪魔さんよ」
加東「ヘッヘッヘッ……オレは箱根DRIFT DANCERSの加東源児ってもんだ」
なんか…話が微妙に噛み合ってないような… 大体、貴様の名前などさっき聞いたわ。
加東「おまえ、BayLagoonの藤沢か…」
翔「………人違いだ。用がないなら話はそこまでにしてもらう」
加東「ヘッヘッ……お前が誰でもかまいはしねえ。藤沢に伝えとけ。箱根で虎口が待ってるってな」
あ…こいつは伝書鳩だったのか。なんて凶悪な伝書鳩だ。
加東「ヘッヘッ……負け犬のまま、逃げてもしようがねえだろってな」
藤沢がかつて負けた…その事実が翔を動揺させていた。 翔は今、藤沢のマンションに向けて私を駆り立てている。 加東の言葉の真偽を確かめるために…。 …別にいいじゃん、負けたって。 そりゃ藤沢だってたまには負けるだろうさ。人間なんだし、そんな事は当たり前だ。 自分の勝手な幻想を押し付けちゃ、藤沢だって可哀想ってもんだ。 ただでさえ走り過ぎで、最近は川志摩葵とうまくいってないみたいなのに。
こんな事では、翔はいつまでたっても藤沢の子分だな。
藤沢のマンションに乗り込んだ翔は直談判の末、藤沢を箱根に引っ張り出す事に成功した。 …と思ったら、それ以前に藤沢は、既に箱根行きを決めていたらしい。 2年前に敗れて峠を降りたBattleの、決着を着けに行くんだと。 …別にそんなもの今更蒸し返さなくてもいいと思うんだが。 横浜に来たって、やってる事は変わらないんだから。
そういうわけで、明日は箱根に向かう事に決定した。 ああ…とうとう峠族の仲間入りか。 後ろだけスタッドレスとかいうのはやめてくれよ、マジで。
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