8thNight The Undefeated
-1-
箱根山…古代は山岳信仰の聖地として、現在では走り屋の聖地として崇められる山。 関東の峠族の一部には、午前零時になるとこの山の方角に向かい、祈りをささげる風習があるらしいが…確認はされていない。
峠族にとっては聖地であると同時に、西からの進行を防ぐ戦略重要拠点でもある。 ここが陥ちる事は、すなわち関東の峠族の死を意味するのだ。 故に、箱根には関東最速の峠族が集まっており、その平均レベルは高いと聞いている。
ちなみに箱根峠は、ドリフトによって年間数pずつ削り取られているらしい。 この状態が続けば約2万5千年で箱根峠は消えるというのが、地質学者の見解だそうだ。ホントか?
まあ、箱根山が消えようが消えまいがどうでも良い。 とりあえず山の上にあるという、TUNE SHOP WINDYに向かう。 店の前に止まると、なにか猛烈な勢いで歩いてきた男がいる。
??「おっ!! 横浜ナンバーのチープなクルマ……!?」
むっ…!何て無礼なヤツだ。翔の事ならともかく、私がチープだとぉ!?
??「キミ、横浜GPに選ばれた、BayLagoonRACINGの人だよね?おっと失礼!僕は箱根DDの山崎リョウ。愛車は真っ赤なCeline‐S3」
な、なんだコイツは?聞いてもいない事をべらべらと…
山崎「助手席には僕に釣り合うカワイイ女の子しか(中略)体重は(中略)峠を(中略)お金とか(以下略)」
…雰囲気は全然違うが、藤沢に近いものを感じるぞ、この男。
山崎「そんな話はおいといて、ここは、TuneShopWindy……噂には聞いた事あるだろ?箱根の伝説のTUNER、高橋九弐輝の名前ぐらいは……」
いいや、全然知らん。翔もそれは同じだと思うぞ。 だってこないだ免許取ったばかりだし。
その後も山崎とやらは一人で勝手に喋った後、勝手に去って行った。 …ああいう奴のクルマは、きっと湘南ナンバーに違いない。
WINDYでいくつか買い物をした後、いよいよ聖地とやらへ向かう翔。 聖地ってのは、その時の最速チームの溜まり場が、そう呼ばれるらしい。 だから、今は箱根DDの拠点が聖地ってわけだ。 ターンパイクを登り切って左に曲がり、少し行った所がそうだ。既に藤沢も来ている。
虎口「2年ぶりか…」
藤沢「元気そうだな」
髪を後ろに束ねた人相の悪い男。これが現在箱根の皇帝と呼ばれる、虎口美春だ。 皇帝…たかだかドリフトがうまいだけで皇帝を名乗れるのか…。いい時代だ。
虎口「…………………。社交辞令など必要ない」
藤沢「おまえは変わらないな……虎口。……2年前のバトルの時と・・・・・・」
虎口「峠……走ってないんだろ?慣らしがてらチームバトルってのはどうだ?」
よくよく見れば、脇の方に加東、山崎など、既に見知った顔もある。 こいつらじゃ相手にならんと思うが… いや、こちらも何故か健三と由佳がついて来てるから、似たようなもんか。
虎口「いい仲間がいるんだろ?」
嫌味か、オノレは。
|