8thMidnight Whisper From The Dark
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藤沢と虎口のTAIMAN BATTLEの前哨戦として行なわれた、BLRと箱根DDのチームバトル。そして翔vs山崎。 結果だけ言えば、翔の速さだけが際立ったレースとなった。 山崎リョウ…やはり引き立て役だったか。
その後のTAIMAN BATTLEも藤沢の勝利に終わり、BLRはなんとか面目を保ったのであった。
めでたしめでたし…といきたいが、今のBattleを境に、翔の心に微妙な変化が起きたようだ。 それを一言で言い表せば、 オレも主役を張りてえ …となろう。 いつまでも藤沢の影で、前座ばかりやってはおれんという野望がほの見える。 しかし、あの態度の大きさで、主役のつもりではなかったとは…
ここ箱根には、藤沢の走りの師匠という織田真学なる人物がいるらしい。 藤沢はその織田に会うために、虎口とのBattleを終えた後も箱根に残っていた。 そして翔も、そのオマケみたいなもんで残っていた。 だが翔には、前述の通り野望があったりするので、密かに織田を撃沈してやろうと企んでいるようだ。 織田のマシンは黄色のEVO2000…午前2時以降にしか現れないと言われる。
そういう事なので、藤沢はクルマの中で一眠りしている。 で…翔は夜が更けてますます活発化した走り屋を相手に、追い剥ぎをして暇を潰している。どこでもマイペースだな。
そうこうしていると、ふと道の脇に、見なれたMicroGTが。 …まだいたのか鈴木由佳。早く帰れ。
由佳「星が近くに見えるねっ。横浜よりう〜んと近い」
嘘をつけ。 こんなにクルマが朝から晩まで走っていて、空気がきれいなわけがない。
翔と由佳の話は、自然に横浜最速伝説に向かっていった。 ここで星を見た二人は永遠に結ばれるとかいう噂があるが… 呪いとか走り屋を語り合う2人では、そんなロマンは望むべくもないか。
ともかく由佳が言うには、横浜最速伝説を打ちたてた走り屋は、誰もその素性を知らないらしい。生きているのか死んだのか、それすらも。 当時の走り屋達も皆、行方不明か死亡するかしているという。 そりゃあ、一般人より走り屋の方が、平均寿命は短いだろうけど…。
確かに翔が疑うように、誰かが裏で糸を引いているように感じなくもない。 ただそんな事をして、誰に何のメリットがあるというのだろうか? 謎だ…。面白がっているだけだったりして。
更に由佳は、藤沢が横浜GPに優勝したら、プロのレーサーになるかもしれないと言った。 横浜GPのスポンサー、WON-TECがそういう計画を立てているらしい。D-Plojectとか言ったか… なるほどー、そのために横浜全市を使って公道レースをね…。 そんな資金があるなら、養成所でも開設すりゃいいのに。
話し終えた由佳がその場を去ると同時だった。 工事用車両のような黄色のボディ。 ハッタリ85%くらいの、妙に派手なエアロパーツ。 間違いない。こいつが織田真学だ。挑発するようにPASSINGを繰り返す。
箱根の眠れる皇帝、織田真学。翔と由佳の様子を覗き見していたのだろうか。 この出歯亀野郎が。
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