8thMidnight
Whisper From
The Dark


-2-



箱根の「眠れる皇帝」織田真学とのBattleは登りだ。
途中まではエンジンパワーを生かして有利に進めていた翔だが…それは突然の闖入者によって台無しにされた。
だー!藤沢!
なんでお前が出てくるんだ!織田に会うだけじゃなかったのか!
まさか、これが挨拶なのか? ううむ、色んな意味で超越している。

しかも、かなりリードを奪っていたはずなのに、いつの間にかドベに落とされているじゃないか。
「勝負に勝ってイベントで負ける」
ふと、そんな言葉が脳裏をよぎる。
…にしても、ようやく自我が芽生え始めた翔に、こんな事をするとは。
人の神経を上手に逆撫でするよな、この男は。
翔のえげつなさは藤沢譲りってわけか。





織田と藤沢。2年ぶりの再開だというのに、あんまり和やかムードではない。
ああ、でも藤沢基準からすれば、十二分に和みモードなのかな。

織田「どうだ、YOKOHAMAは……。 追いかけてるのか?横浜最速伝説を……」

藤沢「仲間が死にました………」

織田「深入りはやめとけ……YOKOHAMAを離れた方がいい……。
戻ってこないか……?峠はいいぞ。余計な事を忘れられる」


どうせなら、走りをやめるよう説得しろよ。

藤沢「あなたが横浜最速伝説をオレに教えた。 今更…………」

き…貴様が元凶だったのか、織田!

織田「……そんなこともあったな」

ちょっとまて、おい!
おかげで藤沢は、サンタさんを信じる子供のように、横浜最速伝説にのめりこんでしまったのだぞ。責任を取れ責任を!

藤沢「教えてくれ!横浜最速伝説……なにがあるんだ?
オレはもう戻れない……。『伝説』にとらわれちまった。
声が……聞こえるんだ。耳をふさいでも……止まらない。
頭の中に……響き続ける……嫌な声が……」


ああ…遂に藤沢にも神の声が聞こえ始めたか。聖地の神気に触れたおかげだな。
悩む事はない。これは試練なのだ。これを乗り越え、悟りを開いた者だけが選ばれし走り屋として、世紀末の日ノ本をあまねく救う存在となるのだ。
難馬は試練を乗り越えられずに、悪魔に魂を食われてしまったが、そなたならば、見事に試練に打ち勝ち、走り屋の明日を見るであろうぞ…


…と、くだらん事を考えている内に、何の進展もないまま話は終わってしまった。
横浜最速伝説の件も、織田が取り合ってくれないのでわからずじまいだ。腰抜けが。

でも…神の声云々という冗談も、場所が場所だけに、ちょっと笑えんよなぁ。
世紀末横浜最速救世主伝説……か。





…ちょっといいかも。





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