8thMidnight Whisper From The Dark
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箱根の「眠れる皇帝」織田真学とのBattleは登りだ。 途中まではエンジンパワーを生かして有利に進めていた翔だが…それは突然の闖入者によって台無しにされた。 だー!藤沢! なんでお前が出てくるんだ!織田に会うだけじゃなかったのか! まさか、これが挨拶なのか? ううむ、色んな意味で超越している。
しかも、かなりリードを奪っていたはずなのに、いつの間にかドベに落とされているじゃないか。 「勝負に勝ってイベントで負ける」 ふと、そんな言葉が脳裏をよぎる。 …にしても、ようやく自我が芽生え始めた翔に、こんな事をするとは。 人の神経を上手に逆撫でするよな、この男は。 翔のえげつなさは藤沢譲りってわけか。
織田と藤沢。2年ぶりの再開だというのに、あんまり和やかムードではない。 ああ、でも藤沢基準からすれば、十二分に和みモードなのかな。
織田「どうだ、YOKOHAMAは……。 追いかけてるのか?横浜最速伝説を……」
藤沢「仲間が死にました………」
織田「深入りはやめとけ……YOKOHAMAを離れた方がいい……。 戻ってこないか……?峠はいいぞ。余計な事を忘れられる」
どうせなら、走りをやめるよう説得しろよ。
藤沢「あなたが横浜最速伝説をオレに教えた。 今更…………」
き…貴様が元凶だったのか、織田!
織田「……そんなこともあったな」
ちょっとまて、おい! おかげで藤沢は、サンタさんを信じる子供のように、横浜最速伝説にのめりこんでしまったのだぞ。責任を取れ責任を!
藤沢「教えてくれ!横浜最速伝説……なにがあるんだ? オレはもう戻れない……。『伝説』にとらわれちまった。 声が……聞こえるんだ。耳をふさいでも……止まらない。 頭の中に……響き続ける……嫌な声が……」
ああ…遂に藤沢にも神の声が聞こえ始めたか。聖地の神気に触れたおかげだな。 悩む事はない。これは試練なのだ。これを乗り越え、悟りを開いた者だけが選ばれし走り屋として、世紀末の日ノ本をあまねく救う存在となるのだ。 難馬は試練を乗り越えられずに、悪魔に魂を食われてしまったが、そなたならば、見事に試練に打ち勝ち、走り屋の明日を見るであろうぞ…
…と、くだらん事を考えている内に、何の進展もないまま話は終わってしまった。 横浜最速伝説の件も、織田が取り合ってくれないのでわからずじまいだ。腰抜けが。
でも…神の声云々という冗談も、場所が場所だけに、ちょっと笑えんよなぁ。 世紀末横浜最速救世主伝説……か。
…ちょっといいかも。
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