1stNight
Midnight PlusOne


-2-


 唐突に現れた二台の車から降り立った内の一人は、紛れもなく石川圭介。
 そう、硬派な石川兄だ。新しいマフラーの調子はどうだ?

石川兄「なに、一人でぶつぶつしゃべくってんだ!気取ってんじゃねえ!」

 ナイスツッコミだ、圭介。

「藤沢はどこにいる?知ってんだろ?」

 もう一人のヤツが後に続く。見るからに石川圭介の血縁者。そうでなきゃクローンだ。
…2Pカラー?
 そしてこっちの胸には、純情。…もういい、好きにしてくれ。クルマのボディに書かなきゃ何をしても構わん。
 ともあれ便宜上白い方を、「石川弟」と呼ぼう。本当は「純情」と呼びたいが。
 で、藤沢の居所を聞かれた翔の答えはこうだった。

「……知らねえ」

 正直だな。いい事だ。だが、普段の行いが悪いのだろうか。

石川兄「ひゅ〜〜!!」

石川弟「その態度、後悔するなよ」

 信じてもらえなかったぞ、翔。
 まあ、わけのわからん逆ギレをするのは、雑魚の法則みたいなもんだが。

石川兄「てめえ、藤沢にあったら伝えとけ!NightRACERSの石川が探してたってな」

 身の程知らずな所も、雑魚の基本である。

 ん…弟の方が、翔をちらちらと見ながら、ひそひそ話をしている。

石川弟(こいつ、兄貴の前を走っていたやつだぜ)

石川兄「!? あの86-Lev!?こんなヤツが……オレの前を……てめえ!!昨日のオレは調子が悪かったって知ってるか?」

 う〜ん、負け惜しみの言い訳をするところなど、もはや心の底まで雑魚に染まっとる。

石川兄「勝ったつもりでいるんじゃねえぞ!」

 おお、この捨て台詞。まさに王道だ。…雑魚のな。

石川弟(兄貴…ショータイムだ。決行の時間だぜ)

石川兄「ケッ!てめえグッドラックだな」

一応…「命拾いしたな」と同義と受け取っていいのだろうか。横浜語は難しい…。

「目の前で吠えてる奴がいる。負け犬の遠吠え。取るに足らない罵りの言葉。
俺はひたすら思ってた。得体の知れない興奮がどこから来るのか?
喧嘩まがいの売り言葉に買い言葉で公道レースは始まる。だがそれは馴れ合いの儀式みたいなもんさ。
俺の探してるのはそんなものじゃない。……シンプルな理由…………この身体を襲う震え……
…こいつの理由を知りたいんだ……」


 わかったから、アンタも独り言はやめい。





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