8thMidnight Whisper From The Dark
-3-
結局何のために織田と会ったのかわからないまま、翔と藤沢はWINDYに向かっていた。 そこには藤沢から翔へのgiftがあるという。贈り物…ね。 この間の例もある事だし、少々警戒した方がいいだろう。 あのシャーシのおかげで難馬を止める事ができなかった…恨むぞ、鈴木由佳。
でも藤沢がWINDYに連れていくという事は、やはりクルマ関連なんだろうな…。
そうそう、山崎リョウが言っていたWINDYの経営者、高橋九弐輝とやらには、実は既に会っていた。 カップヤキソバのCMが似合いそうな、四角い顔のオヤジである。 自分でTUNEしたZeta2400を駆り立て、いきなり客(翔)にBattleを挑んできたので、非常に閉口した覚えがある。無論返り討ちにした事は言うまでもないが。 自分が認めた相手でなければ、客にできないとでも言うつもりなんだろうか? でもパーツ適当にくっつけても800psが出せるのだから、伝説のチューナーも立つ瀬がないよな。
WINDYに着くとすぐ藤沢は高橋と話をし、翔に一言告げただけでそのまま横浜に帰ってしまった。 その言葉とは……
高橋「おらっ!! なにぼさっとしてる!! は〜ん?おまえさん、藤沢に見こまれたって事はたいしたもんだぜ……」
…言葉の繋がりを欠いているようだが、とりあえず褒めているのだな?
高橋「おまえさんへのプレゼントはあのGARAGEの中だ。 行って見てこい」
見た目あまり立派とは言えない、WINDYのガレージ… そこに眠っていたのは、横浜GP仕様のGT RACEマシンだった。 横浜GP仕様?そんなカテゴリがいつの間に…。 とにかく、このガレージには不釣合いなほどに磨き込まれたその白いマシンは、本来藤沢が使うはずのものであったらしい。 藤沢が言うには、自分はRSへのこだわりがあるので横浜GPはRSで出場する。翔にこのマシンのレンタル権は譲る…というわけで、要するにこれが「gift」だ。 余計な事すんな。 アンタはそれでいいかもしれんが、私の立場はどうなる? せっかくコツコツとPOWER UPを図ってきたのに…翔も受けるんじゃない! ええい、貴様にはこの私に対するこだわりっていうもんがないのか! この裏切り者がぁ!!!!
私が一人憤っている間に、翔は高橋から横浜最速伝説のあらましを聞いた。 10年前に存在した黒いZeta3000。それが横浜最速伝説を作り出したクルマらしい。 DiabloTune…そのZetaは、身に纏う不気味なエアロパーツからそう呼ばれ、追いかけた走り屋達は皆事故を起こして死んでしまった。それが「呪い」だ。 高橋の見立てによると、難馬のSEVENもDiabloTuneらしい。じゃあ、難馬が死んだのは呪いのせいか? …マシンの性能に腕が追いつかなかっただけ…と言うのは失礼だろうか。
例のGTマシンは、高橋が対DiabloTune用に組んだものらしい。 市販車にGTマシンで対抗とは、なんとも大人気ない…。 そんなヤツが組んだ代物が本当に速いのか? 翔も、見た目速そうだからって、私の代わりにそんなのを…
くそっ、負けろ!負けてしまえ!
|