9thNight Endless Nightmare
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大黒埠頭… すぐ側の扇島にはNKK京浜製鉄所の巨大な工場もある、京浜工業地帯の要所である。 だが今では無残にも、走り屋達に不法占拠されている。日本経済の明日はどっちなんだろうか…。
それはともかくとして、今夜はC1‐RoadStarsの楠木主催の、『関東最速UNIT』結成会であるのだが…
「そろそろですね……。 横浜GP・TOKYO代表!C1‐RoadStarsのホープ! 楠木さんのお目にかなった人たちなんですね」
ベイラグーンタワーの前で会った楠木を、下っ端らしき男がおだてている。 なるほど、こういうヤツが周りにいるから、妙な自信を持ってしまうのだな。
楠木「TEAMの枠にとらわれない最強の軍団を結成するのがオレのplanだ……」
「……『関東最速UNIT』……誕生ですね」
などと酔いが回り始めている彼らのもとに、黄色い声が。 何となく三原葉子を思い出す女が、楠木を呼んでいる。
「ガモウちゃん!緊急事態発生〜!」
ん?ガモウちゃん? そうか、楠木の名前はガモウというのか。それにしても「ガモウちゃん」……わはは。
「ぜんぜんメンバーが集まってこないわよ!」
楠木「なんだと……いったいどうなってる?」
「集合場所の間違いじゃないですか?」
「こりゃだめかも……等々力さんに怒られるじゃん」
ぶはは、言われ放題だな、楠木。だから失敗すると言っただろうが。
とはいうものの、ポツポツとは集まってきているようだ。 立河唯、川崎鉄史、青山菜々子、石川圭介…… どんな基準で声をかけたんだ? これでフレディ・ロバーツがいれば、吉本興業を駆逐できるぞ。
…結局いつの間にか、首謀者の楠木もいなくなってしまうし、彼のplanは、これ以上ないほどの失敗で終わったのであった。南無… さて、一応義務は果たしたので、とっとと箱根へ向かうとするかね。元気でな、楠木。
箱根に着いてみると、どっかで見たようなX1800が走っている。 辻本か…こんな所にいるとは…楠木の誘いをブッちぎったか。…賢明だな。 後ろに箱根DDの加東、山崎、木下がゾロゾロとくっついている。 イセエビみたいだ。 そのイセエビを蹴散らして辻本と少し話した後、WINDYへ向かう翔。 むー…なんで直接織田に会いに行かないんだろうか。 目的地に向かう前にみんなと話す必要はないんだぞ。 どこでそんな常識を覚えたかは知らんが…。 ただ、高橋九弐輝と会ったのは、多少なりとも有意義であったようだ。
横浜GP決勝戦の夜、高橋の元に黒いリムジンに乗った、サングラスの外国人が訪ねて来たらしい。 その男は高橋に、あのGTマシンのチューナーかと質問し、「DiabloTUNEを負かすチューナーがいるとは」と言ったそうだ。 …口が軽すぎるぞ、そいつ。 高橋の友人は10年前、DiabloTUNEの秘密を探ろうとして行方不明になったという話だが、そこまでして隠すDiabloTUNEの事を簡単に口に出すとは…お友達も浮かばれまいて。
それにしても、横浜GP決勝戦参加者の中にDiabloTUNEがいたとは! 一体誰の事なんだー!全然気が付かなかったー!うわー!
・・・え?バレバレなのにわざとらしいって? まあ…ホラ、一応気付かない事にして盛り上げた方がいいかなー…なんて。
翔は本当に気が付いていないみたいだし…な。
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