9thNight Endless Nightmare
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箱根を走り回っていると、何故かBattleをしている虎口と織田を発見。 …なんにせよ走るんだな、こいつらは。 嬉しい時はドリフト、怒った時はゼロヨン、悲しい時は最高速… はた迷惑なBodyLanguageだ。
とにかく早いとこやめさせて、織田に話を聞かなくては。 箱根DDの溜まり場(通称『聖地』)に入った所を見計らって、織田に近付く。 が…
虎口「藤沢……あいつと俺は戦友みたいなもんだった。なにがあったのかなんてわかりゃしねえ。 そんなことは関係ねえ。走るのに理由はいらねえ!!」
ズッギャーン! よくわからんが、衝撃的な物言いだ。 そりゃあ、(※)反射で走っているんだから理由はないだろうが…。 で、どうしてアンタが出てくるんだ?
虎口「だがな……ここは箱根の峠だ。 ………猛き猛者だけが進むことができる…… それが箱根の走り屋の掟だ。 俺の前に進みたければ乗り越えて行け! この先の道は、俺の道だ! 進みたければ抜き去れ! 俺から奪ってけ!! お前のものにしてから行け!!」
ぐわっ!なんという熱さだ!熱過ぎる!流石は箱根の皇帝だ。訳もなく感動してしまったぞ! 公道を「俺のもの」と言い切ってしまうのはどうかと思うがな。 宇宙の海は俺の海ってか?
うむうむ、アンタを乗り越えなくちゃならん事は、良くわかった。 でも公道は公共のものです。
さり気なく虎口を乗り越えた後は、いよいよ織田と対面だ。心なしか、こないだよりやつれたような…。
織田「……なにブツブツ言ってる?」
うわっ、びっくりした。 …なんだ、翔に言ってるのか。 …え?
翔『織田ってのは…………あんたかあ?』
うひー、やっぱり入れ替わってる。 そうなのだ。横浜GP以後、翔は時々人格が入れ替わる。 あの【声】の主らしい、SPEEDに憑かれた人格だ。 ただ、どちらの人格でも社会的な立場に大して変化がないのは、喜んでいいのか…。
翔『…………オレのことわかるか……。 わかんねえだろうなあ……』
織田「どうした……何言ってる?その顔色に声……………峠酔いでもしたか?」
翔『…………気にするな……10年前のJOKEだ。……時間がねえんだ………… オレがこうしてられるのもわずかしかねえんだ……。無駄話をしてる暇なんかないぜ……』
私が見る限り、一番無駄話をしてるのは……まあいいか。
翔『織田さんよ、あんたに聞きたいことがある……』
織田「お前に話すかどうかは……俺と走ってから……………」
翔『ハッ……くだらねえ掟ってヤツかあ?』
うーむ……こっちの人格の方が、少しは常識的なんだろうか…?とか思ったり。
相手はどノーマルのEVO2000なのだが、そこはかつての皇帝。一筋縄ではいかなかった。 これは−後で本人から聞いた事だが−織田の残り僅かな命と関係しているのだろうか。 いわゆる、燃え尽きる前の蝋燭が…ってやつである。 織田は告知を受けて、峠に戻ってきた。クルマのシートで最期を迎えるために… …迷惑な話だ。ドリフトの最中に真っ白に燃え尽きたらどうする気なんだ。
しかし、織田と会った事で、翔の前には大きな道が開けた。 かつてDiabloTUNEのTUNERだった男が、北にいる。 そいつが10年前の真実を知っているらしい。
北…ね。 …北ってまさか……
※《反射》生理学用語で、刺激に対する動物の最も単純な反応形式を言う。
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