FinalNight The End Of Sweet Dream
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スタート地点のトンネルを抜けると、道は若干登りながら大きく右に曲がり、埠頭へと伸びる。 埠頭の両側は当然ガードレールなどあろうはずもなく、運転を誤れば即刻海へDiving間違いなし。 おまけにタワー崩壊の影響か、所々が崩れつつある。状況は最悪だ。 しかしDiabloを服用したシュナイダーは、そんな状況など気に留めた風もなく、ギリギリまで突っ込んでコーナーリングを繰り返す。くっ…これがDiabloの威力ってわけか。 それに対して翔は、いつもより若干ハンドル操作が慎重に過ぎる… …って、当たり前っちゃ当たり前だが。それなりの学習能力はあるようだし。 それにしてもこの埠頭、なんでこんなに曲がりくねっているんだ。設計者ツラぁ貸せ!
コーナーではちょっと分が悪いが、幸いパワーならこちらが圧倒的に上だ。 少し長めの直線で一気に差を詰め、その先の直角カーブの所で、スピードを保ったままドリフト… …って、こら!曲がれんぞ!やっぱり鳥頭なのか!? しかし、私が滑走していく先には、まるで待っていたかのようにシュナイダーのマシンが。 おお、ダンプを狙っていたのか!いつの間に競艇のテクニックを…侮れん奴め。 しかし、ボディに傷が付くじゃないか、おい!
などと抗議する間もなく、私はシュナイダーのマシンに激しくヒットし、その反動でどうにか埠頭の上に踏みとどまった。一方のシュナイダーはと言えば、
あ・・・落ちた。
そりゃそうだ。こんな場所でダンプなんぞされたら、落ちるに決まっている。 ん…? 翔、お前、まさか…最初からこれが目的かっ! なんてヤツだ。自ら率先して走り屋の心を汚してどうするんだ。 朱に交わるとこうなってしまうのか…。 でも、まあどうせ勝つのは我々だし、結果オーライという事で… …バックミラーになんか写ってるけど…なんだ、クルマのヘッドライトか。
クルマのヘッドライト!?
ちょっと待て、落ち着いてよく考えるんだ。 ニュートン力学の第二法則に則って考えると、今現在のシュナイダーの位置は… …ええい、そんな事はどうでも良いわ! まさか、ボンドカー? いや、アレは亡霊に違いない! ひいいっ!化けて出るの早過ぎるぞ!流石は統合EUROチャンピオン!
…ううっ、もうイヤだ、こんな生活…。次はファミリーカーとして生産されたい!
文字通り死力を尽くしたBattleの結果、シュナイダーは海の藻屑と消えた。 死への恐怖など微塵もない(既に死んでるのだから当たり前だ!)、不気味な笑顔のまま…。
翔が突き落としたのか自ら落ちたのかはわからないが、DeadEndの約束は果たされたわけだ。
Rewardという言葉には、悪の報いや罰という意味もある。 負けてもGET REWARSできるなんて、シュナイダー君、良かったネ☆
これで長い夜も終わりを告げる。もう、こういう阿保な事件はまっぴらだ。 これからは平和に…って、なんか見た事のあるようなクルマが目の前にあるな。 それは、DiabloTUNEされたRS2000…翔が殺人のダシに使った、藤沢のクルマだ。 でも、藤沢は重傷を負って入院中のはずだよな。誰が乗ってるんだ?
私の疑問に答えるように、RSのドアを開けて降り立ったのは、藤沢…じゃなくて、葵だった。藤沢も一応、助手席にいる。 「川志摩サトル」という名前が出た時に予想していた事だが、やはり葵も関係者だったか。 何か悟りきったような葵の表情からは、今一つ心中を窺い知る事ができない。 一体何故、今になって翔の前に現れたのか?その真意とは?
葵はそんな私の心を知ってか知らずか、10年前の出来事を語り始めた。 センセー、手短にお願いしますね♪
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