FinalNight The End Of Sweet Dream
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10年前、葵と翔は出会っていた…というか、かなり親密な関係であったらしい。 走り屋達をDriverに引き入れていた葵の前に、突然現れた走り屋。 Zeta3000を駆り、DiabloZeta以上の速さを持った走り屋。それがかつての翔だった。
葵「『横浜最速伝説』のいくつかは、本当はあなたの記録………… あなたは、本当の『横浜最速の男』……。 『Diablo』の力を借りずに走り続けた、真実の『最速の男』……」
ほほう、Diabloを使わずとも同じ走りが……… …それって一見凄いけど、よく考えると元々恐怖や不安を感じないだけなんじゃないのか?いいのかそれで?
葵から真相を聞かされた翔は「走り屋の心を汚した」DiabloZetaを葬るべく横羽線に出撃し、あの事故に巻き込まれ…後はご存知の通り。 なんか…自業自得って気もしないではない。 余計な事をしなけりゃ、今頃は葵と幸せに暮らしていたんじゃなかろうか。
その後10年が経ち、葵は藤沢と出会って… …葵サン、アンタ今いくつだ? 10年前に翔と…
い、いや、済みません。もう聞きません。 ともかく、ようやく10年前の心の傷を癒しかけた矢先にこうして翔が現れるなど、皮肉な話だ。 戦争で死んだはずの夫が、再婚した妻の元に帰ってきたようなもんだろうか。 …いやいや、まだ2人ともやり直せるぞ。 特に翔、このまま鈴木由佳の毒牙にかかっていいのか? ちょっと歳は食ったが、葵の方が…
だが、10年という時間は長く、それはもう取り戻せはしない。 葵には今の自分があるし、翔もこれからの自分を作っていかねばならない。 まあ、そういう事で、これからのためにイッちゃってる藤沢を何とかする事が、2人の共通課題だ。
その方法とは… …ここまでお付き合い下さった方々なら、もうおわかりですね?
本当なら、Diabloを投与された人間を走らせるなどかえって逆効果のような気もするが、そこはそれ、 藤沢一輝だからというのが、立派な理由になってしまう。 その前に病院に戻って怪我を治すべきだとはわかってはいるが、こうなったらもう止められない。 DEAD OR ALIVE! あの世まで突っ走れ!
…と思ったら、200mも行かないうちに、RSは止まってしまった。 ああ…あの世まで突っ走っちゃったのか? それとも…
翔「『横浜最速伝説』……終わっちゃいない。なあ、藤沢先輩……そうだろ?」
うーむ…今となると、翔が藤沢に「先輩」というのは、どことなく違和感があるな…。
藤沢「翔……お前……が…オレの探してた伝説……真実の伝説の男…………。 お前と……もう一度…………走り…たい……。…………な、翔……次は……負けないぜ……」
…この二人……ちょっとアレだな……。
藤沢「なあ、翔……オレたちの夢見た伝説……ちっぽけな伝説……本当にあったのか……。オレたちの追いかけてたもんは、熱い夏のアスファルトを焦がす幻……蜃気楼みたいなもんだったんだろ。だけどな……翔。オレは後悔なんてしてないぜ。そうだな……むしろ、誇らしく思ってる。夢を追うってことは、オレたちに許された最高の贅沢だ。たくさんの『いつか、きっと』……オレたちは追いかけてる。オレたちの走り……道に刻まれた物語…………誰かが思い出す事もないだろう。すぐに消えてしまう走りの刻印……だけどな……それでも……オレたちは走り続ける……どこまでも……最速の彼方へ……」
結構元気そうだな、藤沢君? それだけお喋りできるんなら身体の方は大丈夫だろう。 言動から見ても間違いなく藤沢だ。治療はどうやら成功したらしい。
藤沢と翔が二人だけの世界に入っていたその時、背後から凄まじい勢いで振り下ろされる鉄パイプ。 無防備な後頭部に直撃を食らった翔は、一瞬意識を失ったみたいだ。(エラい音がしたが…)
やったのは、海中から蘇ったシュナイダー…ではなくて、葵だ。 一体どこに鉄パイプなんか…背中から出したのか? 飛天三剣流も真っ青の一撃を翔に食らわせた後、葵は藤沢を抱えてRSの助手席へと放り込む。 な、なんて力だ。藤沢の体重は75kgあったはず。入院して少し痩せただろうが… 鉄パイプ…この腕力…まさか、石川や楠木を撲殺したのは・・・・・・? しまった!葵がラスボスだったのかっ!!! ぐう…もう誰も信じられないぜ。次は辻本か?由佳か?
葵はRSの運転席に乗り込み、今にも発車しようとしている。 どこへ? この先には海しかないが…
まさか、これが彼女なりの清算の仕方だとでも? だあぁ!どうしてどいつもこいつもすぐに死にたがる(もしくは死ぬ)んだ! これが…噂に聞く四角の呪いなのか?
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