1stNight
Midnight PlusOne


-5-

 大分道草を食ったが、ようやく目的地の外国人墓地に辿り着いた。
 見ると門の前に、見覚えのある四台のクルマが停まっている。周囲を囲まれるように…いや、囲まれた一台は、明らかに健三のCVCだ。あの奇妙なカラーリングは、衛星軌道上からでもわかる。
 なにやら不穏な空気が漂っていて私は行きたくないが、この男は頓着しないんだろうな…。
いつもの事だが。
健三「知らない、知らないッスよ。そんな事、知らないッス!」
 う〜む、予想通りというかなんというか…捕まっとるな。健三が四人のチンピラに腕を掴まれ、拘束されている。

雑魚A「藤沢を呼び出せって言ってんだ!」

雑魚B「どうなるかわかってんの?」

雑魚C「君たちの仲間の由佳ちゃんが」

 ぬう…弱い者を力ずくで拘束した上に、脅迫とは。行動がRPGの敵キャラみたいじゃないか、まるっきり。
 …実際その通りなんだが。

 そこへ颯爽と現れる翔。うむ、こういうとこは流石に主人公だ。
「……いざこざか……」


 山田を助ける……

   ……山田を見捨てる


 一瞬迷ったな、お前。

「……おい!」
健三「あああ、赤碕!」
 
翔の姿を認めた健三は、あっさりと拘束を振り切って、翔の元へと駆け寄った。
 強いじゃないか、健三君。キレると怖いタイプだな。

健三「知らないって言ってんじゃんか!由佳に手出ししたら、た…ただじゃおかないぞ!」

「………」

健三「何とか言ってくれよ」

「……どうなってる?」

 …だめじゃんか、翔。(←健三調)

 ええい、要するに、辻本が藤沢に負けた事を逆恨みしたナイトレーサーズの雑魚(石川兄弟含む)が、鈴木由佳をさらって藤沢を脅迫し、強引に再Battleしようとしているっていうんだろ?
 察しの悪い所など、主人公らしくて良いがな…。
 ちなみに「鈴木 由佳」というのは、ベイラグーンレーシングの、マスコットガール的存在の女だ。
イギリスの世界的に有名な小型車を走り屋仕様にするという、ファンが見たら泣きそうな所業をやっている。

健三「あちゃ〜!!ここは逃げるが勝ち!俺……逃げ足だけは藤沢先輩より速いじゃんか!!」

 そう言ってCVCに乗り込む健三。道…塞がれてるんじゃないのか?
 腕を掴む連中を簡単に振り払えてクルマも動かせるんなら、自力で逃げれば良いのだ。自信を持つと怖いタイプかもしれない。
 ともあれ、こうなったからには翔も一緒に逃げるしかなかろう。


 横に並んだ私と健三のCVC。
 そしてその後ろにきちんと整列した、ナイトレーサーズの方々。
 深夜の住宅街に、逃亡劇の幕開けを告げるカウントダウン

 なにか違う気もするのだが。




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