1stNight
Midnight PlusOne


-6-


 翔と健三は、ベイラグーンレーシングの本拠地である、ベイラグーン埠頭に逃げ延びていた。
 逃亡中に健三が話してくれたが、藤沢に挑戦しようというのは、石川兄の方らしい。
 ほう…珍しいな。弟が兄の敵討ちをするというのが、大体の相場だが。
 まあ、藤沢から見れば、弟も2Pカラーに過ぎないので、大した問題ではなかろうが。そんな事より、まずは翔に勝つほうが先だと思うが…圭介クン?


 さて、翔と健三は、手分けして石川のGRAを探す事になった。
 横浜スタジアムの側を通った時、翔が急にブレーキを踏んで、私を停めた。
 …?あれは確かNRのbQ、沢木誠のSil‐14Qじゃないか。翔の方に、クルマを降りた沢木が近付いてくる。

沢木「すまねえ!こんな事になっちまって。今辻本に連絡を取ってるとこだ。全然捕まんないんだ」

 bQの沢木にしてみれば、自分のチームのメンバーが不祥事を起こして動揺しているのだろう。繋がりの悪い言葉がそれをよく表している。単に語彙が貧困…なわけではないと思うが。

沢木「石川の野郎!!突っ走りやがって…」

 仕方ないだろう、なんたって走り屋だしな。…すまん。

「NightRACERSとは無関係ってわけか?」

沢木おうよ! 情けねえ話さ」

 いや…それはチームのbQとして、少々問題のある発言ではないだろうか。
 「俺の責任じゃないも〜ん」とでも言いたいのか?

沢木「辻本が藤沢に負けたんで統率が取れねえ!チームがバラバラになっちまった」

 だから…そういう時のためにお前がいるんだろうが!
 あくまで他人のせいにする沢木…走り屋ってのはこんなのばかりか?

沢木「だがよ!彼女には指一本触れさせねえ!オレを信じてくれ」

(……信じてやるか)

 信じるのか?翔。
 まあ…無責任とはいえ、コイツにもそれなりのカリスマはあろう。一応信じて…

「言いたい事はそれだけか……」

 へ?

沢木「ほんとにすまねえ!今のオレには謝る事しかできねえ…」

 ホラ…沢木も困ってるじゃないか。信じるならもう少し態度で表せばいいのに。

沢木「そういやお前、昨日が公道レースデビューなんだってな。初めてにしちゃ、いい走りだ!名前、教えてくれよ」

 焦って話題を切り換える沢木。気の毒に…。

「……赤碕だ」

沢木「おう!赤碕か!オレは沢木誠だ。よろしく頼むぜ!
お前速くなるぜ。この俺が認めるんだから間違いねえ!」


「ご機嫌取りなら時間の無駄さ」

…コイツは…。

 ともかく、これで正面きって石川兄を叩き潰せるわけだ。よし、早速探しに行くべし!

 …と、目の前を横切る赤いGRA。
 ふっ…久しぶりに追い剥ぎじゃないBattleが楽しめそうだ。




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