2006年9月の日記
小説『帯広○○高校文芸部』
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そもそも、笠井直人(16)の謂うところの、天使それ自体に具現性はなく、天使が笠井の目の当たりとなり、この哀れなる青年を破壊せしめる所となるには、何らかの個体に彼女を憑依させねばならぬ。しかし、笠井を苛め止まないのは、天使と憑依先の個体が不可分にないことで、それはしばしば気まぐれに個体間を往来する。浪漫主義者、笠原直人としては、かかる航跡こそ天使の実存せる証であり、天使そのものだと高らかに謳いたい気分であるが、これはほとんど、ナンパ師の言い訳に近いものがある。
だが、笠井に多少の同情でも呉れてやるのであれば、ほんの数週間の内に、宮崎あおいから先輩へ、そして今や小谷野薫(15)へと移転しつつある天使の見境のない躍動が笠井に供与した苦悶を、慮ることも出来る。むしろ、天使の尻軽さは、笠井の受容する混乱の反映だと見る向きもあろうが、もはや、その辺の分別はつきかねぬ。
加えて、事態を悪化させるのは、最新の転移先である所の小谷野薫(15)が、生物学上の男だったことで、これではさしもの笠井も絶句せざるを得ない。不幸にして、笠井の住まう文化圏は、BCの地中海北岸等とは違い、少年愛は奨励されておらぬ。というか、犯罪である。笠井としては、先輩から離脱しつつある天使を何としても引き留めねばならぬ。
こうした笠井の努力というのは、とりあえずの所、無意識下において作動したようで、先に少し触れたように恋愛の不覚だとか、嫉妬だとか、そういう形で彼の内から現れてくる。あるいは、これらもまた表裏が逆転し、恋愛の不覚や嫉妬を合理化するために、少年愛への禁忌が持ち出されたのかも知れぬ。が、われわれは先に進んで、笠井を襲った新しき感情の詳細を見て行かねばなるまい。
小谷野に対する少年愛の誘発は、手始めに、才能への嫉妬として、その抑制の試みが為されている。同人誌を発刊する事に限れば、笠井を確保したときとは違って、今度ばかりは先輩の目は確かだったと言える。小谷野薫には明らかに先輩と笠井を軽く凌ぐ文才があり、一度は封印されたワナビィの問題が、笠井の中で立ち上がってくる。
小谷野に文才がある以上、笠井が怖れるところの、同人誌の発刊は目に見えてきて、先輩と小谷野が何やら討論をする風景が、部室に見られるところとなる。というより、才能の落差から、会話の主導権は小谷野に握られる始末である。
『先輩、此処はこうするべきではないのかしらん、フフン』
『うんうん☆』
万事がこの体たらくで、殊に、笠井の聞いたことのない恥じらう乙女のような嬌声が先輩から度々に発せられるに及んで、もう如何ともしがたくなる。
反動分子、笠井直人は、一貫して作業の工程から排除されることとなる。いままで、それとなく作業の妨害をしてきたのだから、これは致し方のない事だが、笠井の心中としては、もうハンカチの噛みしめ、部室の隅から二人に怨念を送りたいところではある。しかし他方で、自分を大らかに格好良く、余裕あるところを見せたくもあり、笠井は必死こいて、大人の微笑などというものを捏造し、二人を部室の隅から温かく見守る振りをするよう、肩をふるわせながら努め、かつ、時折は、先輩に構ってもらうよう、今度は自分から弁当の催促などを行ったりするものの、彼女は冷たく「忙しいの」と言い放つのである。
笠井は、毎晩のように、むせび泣きに泣き、枕を濡らしまくり、ついでに、飲酒の癖を覚えたりするのだった。(つづく)
小説『帯広○○高校文芸部』
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後年、笠井直人は師匠の言葉を回想する。紫煙の充満する大学の地下アジトで、恋愛AVGにのめり込んでいたロバアト・アクセルロッド教授は、意中の娘にフラグを立て損なったのか、途方に暮れたように大きな溜息をつく。
『孤独というものは、対手の居ない所で生じはせぬ。むしろ、それは孤立である。疎外を行う対手が居なければ、孤独は深まらぬ』
現況の笠井直人(16)の激情と混乱を眺めるに、その孤独は恋愛の嫉妬に由来し、しかも、かかる嫉妬、つまるところ先輩の方へ再び増強されつつある愛欲は、小谷野薫(15)の投入を以て、初めて顕在し得たものである。しかし、先回の機能主義的見解に拠れば、先輩へ放たれる愛欲は迂回工作の一環で、本命、小谷野薫(15)との禁則愛を避けるが為の策である。先輩への愛欲が高まる程に、いま彼女を奪略せんとする小谷野がニクニクしくなる。かくして、文芸部のデリケートな均衡は保たれ、自分は小谷野を草むらに押し倒したりすることもなく、高校生活を終えるのだ。何十年に及ぶことかは知れぬ。自分は後々まで青春の失われた恋を嘆き、夜な夜な枕を濡らすだろうが、それもまた、犯罪者になるよりは余程に増しである。自分が黙って、部室の隅で卑屈に笑っておれば、全ては丸く収まるのである。
ナルシスト、笠井直人としては、「何と俺様は不憫なことか」とうっとりでもしたい気分であったが、他方で、やはり腹立たしい気分もあり、自分が大いなるダメージを被りつつあることを、本人が隠匿の努力をしているにもかかわらず、うっかり漏れちゃった、という風な装いで、それとなく伝えたい欲望も出てくる。笠井が飲酒の癖を覚えたのも、そんな気分の顕れと言えそうで、何となくアルコールの香りを躰から漂わせてみれば、健康狂の先輩などは一発で殺れるはずである。しかし、なかなかうまくいかないもので、実際のところ、路上生活者を見咎めるような視線しか先輩は送ってくれぬ。しかも困ったことに、その眼差しがマゾヒスト笠井直人の欲望をかえって煽ってしまう。いや、本当はそれが狙いなのかも知れぬ。
一方、小谷野は小谷野で、傍らにてバタバタしてる笠井に、何とも意味ありげな微笑みを送ったりする。最初、勝ち誇った笑いかと解した笠井は、怒り心頭しつつも、いやこれでよいのだ、これで万事うまく行くと、無理やりに自分を納得せしめようと努力をする。しかし、今や真性の少年愛好癖者たるを暴露された笠井である。彼の努力は空転するほかない。美しい微笑みの放射に幾度と無くさらされるに及んで、これはひょっとして、斯様に混乱せる自分を愛でるような、あるいは、取って喰ってやろうとでも謂うような、そういう微笑みなのか、と思われて来ちゃったりして、何となく乙女の恥じらい如き感性が沸々と浮かび上がり、「きゃっ」と奇声を発したい衝動に駆られるも、はっと我に返ると、いま自分を支配しつつあったおぞましき感情は何事か、と驚愕するのである。
笠井が混乱するのも無理はない。小谷野薫(15)は真性の男色家で、笠井直人(16)の躰を密か(?)に狙っていたりするのである。
何かもう、続きを書きたくなくなってきたが、つづく。
小説『帯広○○高校文芸部』
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時折、笠井直人(16)に小悪魔的な視線を送りつけたりする小谷野薫(15)であったが、危なげながらも文芸部の内に溶融してくると、それだけでは済まなくなり、笠井と下校を共にしたがる傾向が出てくる。まだ、小谷野が真性の男色家だと知らぬ笠井は、この男の真意を測りかねる。とっとと先輩とつきあっちゃって、一緒に下校なんかしちゃって、休日にデエトなんかしちゃって、それからそれから――という諸々をさしおいて、自分と帰るのだから、部員間の融和にでも励んでおるのか、案外、優等生タイプなのか、それはそれでムカつく、と些かの当惑と混乱を胸に抱きつつ、並んで歩行する小谷野を観察と称してチラチラ盗み見ている内に、夕焼けの光の中にあるこの男の横顔が、まるで夢幻のような、この世のものではないように思われてきて、ついでに下卑た街角も、あるいは、自然の一切が、何とも美しく極まりないように感ぜられてくる。油断した笠井は、顔面を弛緩させ、小谷野と目を合わせてしまい、これはまずい、何か当たり障りのない世間話などをして誤魔化せねば、と焦り、いきなり核心をつく。
「きっ、君はなぜ先輩とつきあわぬ? 俺なんかと帰っても詰まらぬだろう」
「貴男こそ、どうして先輩とつき合わない? 貴男は自分の欲望へ忠実になるべきだ。自分を裏切ってはいけない」
「欲望に忠実であるから、俺は先輩とつき合わぬのだ」
小谷野はまたしても「フフン」と意味ありがな笑みを浮かべ、詩人モードへ突入する。
「僕らの光は、寛容な春の甘い空を飛び、青空が冒涜を行う夏の大気を屈折し、踊る雪の切片とともに厳寒の土へ還るだろう。――願わくば、沈黙の内に、僕の醜悪な肉が、この地上から立ち去らんことを」
とりあえずのところ、小谷野薫は何を目指していたのか。むろん、笠井の躰であるが、ここで語りたいのは、そこに至る具体的手法である。下校を共にしたと謂っても、野外では人目があって、口唇すら奪えぬ。となると、確保すべきは二人っきりの密室、つまり、先輩の不在せる部室である。
機会は虎視眈々と窺われ、上述の問答から数日後、ついに時はやって来る。文献を探すと称して、部室を飛び出した先輩を笠井が見送るや否や、振り向くと、甘い吐息が顔面に降りかかる距離まで、小谷野の端正なお顔が接近している。
「前に貴男は言った、どうして彼女つき合わないかと。昨日、僕は、先輩に告白されたんだ。どうすればよいと思う?」
笠井は、もう、自棄糞である。
「つきあえ! つき合っちゃえ! さっさと、つきあいやがれ!」
しかし、笠井の悲鳴は、小谷野の痛ましい笑いに取って代わられる。
「よくわからないんだ。女の人を好きになるって、どんなことだろう? 貴男には判るだろう? それはどんな気持ちなんだ? 頼む、教えてほしい。僕はもう、この亡霊のような躰に飽き飽きしたよ」
こうして、小谷野の舌先端が笠井の口腔におめおめと侵入してくるのだが、世の中はまことに間が悪いもので、かかる作業の真っ最中に、目当ての文献を抱えて上機嫌なった先輩が、はち切れんばかりの笑顔で、部室に躍り込んでくる。ちなみに、先輩の第一声は以下の如くであった。
「ただいま☆」(つづく)
小説『帯広○○高校文芸部』
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人類の手から「宮崎あおい」が失われて、四年の歳月が流れた。
その間、天使は笠井直人の元を尽く立ち去っているのだが、依然、もはや手の届かぬ所から、彼を実効支配するようでもある。むしろ、あり得ることの希少性が、笠井の感傷を煽り続ける。
あの日、文芸部が灰燼に帰して以来、笠井は先輩に合わせる顔を喪失している。が、一度だけ、卒業式を終え、上京を翌日に控えた彼は、癲狂院に収容された先輩を見舞っている。今の笠井にとって、地球でもっとも貴く美しい生物は、白い個室のベッドに座り、スリッパの足を揺らしていた。
「ねえ笠井くん、晴れた日はオナニーがよく似合うよ」
「晴れた日だけじゃない。曇りでも、雨でも、嵐でも、何時だって似合うはずさ」
「――小谷野くんのこと、気にしなくて良いのよ。私が悪いんだから」
「なあ、先輩」
笠井は無理な笑顔作りに励む。
「俺は、大学に行けば……、新しい生活が始まれば、きっと本当の天使が待ち構えていて、この地獄のような北国のこと忘れられると思ってきたよ。でも多分駄目なんだ。もう駄目なんだよ。先輩、俺はもう諦めて、何者でもない人生を送ることにするよ。人目を忍んで学生をやって、サラリィマンになって、一日十二時間働いて、休日のパチンコだけが楽しみな生活を送って、童貞のまま一生を終えるよ」
「本当の天使に、会えると良いね」
「貴女はいつもそうだ、人の話を聞いていないか、あるいは、残酷な気休めを言う」
「ごめんね、笠井くん」
――しかし、そこから四年も経ってしまえば、俺様の人生を狂わせやがって、何度謝っても済むもんか、と怒りもこみ上げてくる笠井である。あの北国から隔たるほどに、先輩の影が、それにも増して、あの不幸なる小谷野薫の暗影が、ますます以て、笠井の身辺を侵す始末である。
笠井はプンプンする余り、学生生活に入るや否や、いわば毒を以て毒を制す気合いで、少年愛好癖にのめり込んで行く。ここには、笠井の残り少なくなった生涯の師、ロバアト・アクセルロッド教授の存在が大きく関わるのだが、その詳細を記すには、この物語を長々と語りすぎてしまった。ただ、学生時代の笠井が、アクセルロッド教授の地下組織に配され、非合法ポルノグラフィの運び屋として暗躍した記録だけは留めておきたい。彼の日常は、誰か判らぬ他人から物品の受け取り、顔を知らぬ他人へ運び届ける毎日で暮れる。流通の結節が他人同士なのは、芋蔓式の検挙を避けるためである。笠井は電車を降り、見通しのよい広場に出て、公安当局に尾行されておらぬか視認し、また電車に乗る。この繰り返しである。しかし、尾行は撒くことが出来ても、小谷野薫の病的な微笑みと、病室の隅でうずくまる先輩の姿は、どこままでも追ってくる。この調子だと、宇宙の果てまでついて来るに違いあるまい。
『なんて、壮大な奴らだ』
この頃になると、笠井は、始終、酩酊状態にある。もはや酒を手放せぬ。だが、笠井のアンダーグラウンドな生活も残りわずかだ。数週間後、アクセルロッド教授の組織は、一斉検挙によって壊滅するのである。(つづく)
小説『帯広○○高校文芸部』(最終回)
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フクスグル湖の水辺で目を覚ました笠井直人は、身の回りに散乱した酒瓶を片づけながら、日の出を待つ。霞が晴れると、水面の光に目を細める。近くのゲルに住まう子どもたちがやって来て、馬乳酒を勧める。しかし、そんな水のようなものを飲んではいられない。枕にしたジャガイモの蒸留酒を迎え酒にして立ち上がり、子どもたちと凧を揚げて遊び、故国を想う。大陸で逃亡生活を送る笠井直人の一日が始まる。
笠井がこの草原に定着して、もう何年にもなっただろうか。素朴で屈託のない人々に囲まれて、笠井の人間性は回復していった……ことはなく、不衛生な食事に腹を下しては、消毒臭の溢れるコンビニ弁当を懐かしみ、蚊の大群に襲われては、エアコンの効く快適な個室を思い出した。幸いに、酒だけは不自由することもない。迫り来る近代化が社会不安を醸成して――かどうかはよく知らぬが、どの村でも、飲んだくれの住民には事欠かない。いずれにせよ、泥酔にあるときまでは、先輩も小谷野薫も追っては来なかった。しかし、それも今日までのことらしい。初夏の訪れと共に、この地の果ての村にも衛星回線とネット端末がやって来たのだ。
笠井は、子どもたちに連れられて、端末の鎮座する粗末な小屋へ入り、モニターに群がる彼らの背中を見て微笑む。
『この呪われた息子たちよ』
地球とつながった子どもたちは、これからあまたの天使たちと出会い、欲望と世間体の狭間で苦しみ、届かぬ愛を前にしながら滅び行くことになるだろう。そう、みんな、おたくになってしまうのだ。しかし不思議と、嘆く心持ちは感ぜられない。むしろ何か懐かしい。
彼は、端末の前で立ちつくし、震える手でキーを押す。数時間に及ぶ検索の末にたどり着くのは、完成されなかった同人雑誌の断片であり、懐かしい先輩の痕跡だ――。
笠井直人は密航船で日本海を渡り再び祖国の土を踏む。電気街を訪れ、雑踏の人数に戸惑う。街並みは変わり、通りの名前が思い出せない。何よりもまず、人混みの中を歩行する術を忘れた。
這々の体で寂れた裏通りに入った彼は、場末のメイド喫茶にたどり着く。そして扉を開ける。
「お帰りなさいませ、ご主人様☆」
出迎えるのは、メイドさんになった先輩。
「帰ってきたよ先輩」
笠井はスラスラと答え、席に着き、オーダーを取りに来た彼女へ微笑みを浮かべる。
「先輩。小谷野の奴、先輩のこと好きだといってたぞ。あんな天使またとないって、泣いていたぞ」
先輩は、はにかむように言い返す。
「嘘つきめっ☆」
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笠井は、相変わらず、湖のほとりで酒をあおり続ける。この草むす体は、もう二度と祖国に戻ることはない、と言えばなかなかシブいのだが、実際のところ、倦怠と苦痛で動くのが大儀である。
村の少女が笠井の側に座る。
「愛って何?」
果たして、それが何だったのか、むろん、笠井にはよくわからぬ。ただ、その顛末はそろそろ明らかになってもよい、と考える。
「世界の果ての文芸部で、僕らは特別だと思っていた。僕らには輝ける未来がある。僕らは、幸福な人生を送るだろう。そんなことを考えていた」
暫しの沈黙が訪れる。
「自分は、あの愛が果たしてあり得たのか、ずっと疑っていた。あの愛は、本当のところ、一度もあり得なかったかも知れない。しかし、今、自分が知るのは、それが、先輩の居た部室という記憶の彼岸に転写され、永遠になった、ということだ。それは確実に失われ、葬られた。つまり、かつてはあったんだ」
笠井は大の字になって大地を受け止める。自分は程なくして、この土に還ることになるだろう。小谷野が眠り、先輩がやがて眠るであろう、この土へ……。
「君はこの愛を、やがて失う。しかし、いつかは失うために、君はこの愛にたどり着かねばならぬ。みんな、愛の希少性を抱きしめて、この大地に還るんだ。そうして、また、みんなと一緒になれるんだ。もう、それで充分だし、それで満足じゃないか。それ以上に何を望む?」
少女は肩をすくめる。
「貴男、マゾヒストね」
笠井は腹の底から笑い声をあげた。
17――あるいは、もうひとつの人生の物語
「なんて酷い食事してるの! 信じがたいわ」
いきなりの痛罵で、笠井直人(15)は面食らった。美しい先輩が、図書室で麩菓子を喰っていた彼を咎めるのである。
「ほら、お弁当」
笠井は疑惑を抱かざるを得ない。こんな美しい先輩が、見ず知らずの自分にいきなり弁当を差し出すなど、あってはならぬ事だ。
しかし、笠井の鋭敏な頭脳は憶測に走る。
そうだ、これは恋愛AVGか何かなのだ。自分は知らぬ内に、この人生を幾度と無く繰り返しておるのだ。そうせざるを得ないのは、これまでの人生がすべからくバッドENDで終わってるからである。本当の天使を見つけねば、この循環から抜け出せぬ。
笠井は弁当箱と先輩の顔を見比べ、確信をする。間違えようがあるだろうか、これは俺の嫁である、天使である。
彼は、恐る恐る弁当箱に手を伸ばす。
――今度の人生は、トゥルーENDに至るのだろうか?(了)
『純情きらり』(最終回)
うおお、ギャルゲーになってもうた――、あおいあおい。