森 博嗣 作品書評1

 

『すべてがFになる』
(1996)
講談社ノベルス モF-01
(1996. 4. 5 / 講談社文庫 1998.12.15)
他、犀川&萌絵シリーズ全10巻

 
■あらすじ 
 
愛知県三河湾沖に浮かぶ妃真加島には情報工学の天才少女といわれた真賀田四季博士の私設
研究所があった。15年前、14歳の四季は両親殺害の容疑を掛けられ、無罪判決後は孤島に引
きこもり、世間との交流を断っていた。四季に興味を抱いた国立N大学建築学科1年に在籍
する西之園萌絵は資産家令嬢というパイプを活かし、面会を果たす。更に、同助教授・犀川
 
創平らと共に研究室のゼミ旅行で妃真加島を再訪することになった。犀川と萌絵は四季との
面会を取り付けようとするが、四季との交信が1週間断たれたままだという。所員が入室を
迷う最中、ワゴン型ロボットに乗ったウエディングドレスを纏った死体が現れる。部屋のデ
ィスプレイモニタに、「すべてがFになる」という謎のメッセージが表示されていた……。
 

 
■作品書評
第1回メフィスト賞受賞
 
孤島に密室、美貌の天才、鮮烈な謎の提示。ミステリの王道的な形式である。それを作者は
理系的センスで現代風にアレンジしている。魅力的な探偵役も忘れていない。好奇心旺盛な
ミステリマニア、愛知県有数の資産家令嬢、亡き父はN大学元学長、叔父は愛知県警総監、
叔母は愛知県知事夫人、脅威の計算能力や記憶力を持ち、スポーツカーを駆り、加えて美人
 
──西之園萌絵というキャラクタはこれでもかというほど修飾語句に飾り立てられている。
萌絵は二物も三物も与えられている。対する犀川創平というと飄々としていながら、どこか
底が見えないこれまた天才という人種である。非難ではない。日常から遊離したような設定
であるが、これは作者がミステリ作品の舞台を一種のゲームとして捉えていて、それはシリ
 
ーズを通して感じ取れることだ。シリーズの1作目となる本書は、(実質は5作目ゆえ)文
章や構成が手慣れ、目指す方向性も端的に現れているお気に入りの1冊である。未読の方の
面白さが削がれるので、別稿においてネタばれも交えシリーズの全体像について語りたい。
  
(1999.9.6 高林廉)
 
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