ここで紹介するのはあまり売れていない本ばかりですが、この本は本当に手に入らないはずです。
現在、同じ出版社から同じ名前で詰将棋の本が出版されていますが、それとは別のシリーズで、文庫サイズの本です。5・6・7級からこの3・4・5段まで4冊の本をすべて、当時5段だった伊藤果が書きました。他の3冊は持っていません。
これを買ったのは、難しい詰将棋を求めていたからではありません。単に、3・4・5級と間違えたのです(笑)。本屋から帰って解こうとしてみると、いきなり11手詰から始まっている…というわけで、この本は買ったあと何年も本棚で眠っていました。
しかし、詰将棋の実力が付いてきてから見直してみると、面白い作品がいくつも載っていることに気づきました。まず、冒頭に「図式の分類について」という章があり、主な趣向図式の代表例が載っています。例えば、右図は森田正司氏作(詰パラ)の無仕掛図式です。名作というのは偶然に出会うものですね。
ところで、当時の私は「(詰パラ)」というのが何のことだかさっぱりわかりませんでした。(ご存じない方のために念のため説明すると、詰将棋パラダイスという詰将棋専門の月刊誌に載ったという意味です。)詰将棋の専門誌があるとは夢にも思いませんから、私は「パラッとした詰将棋のことかな〜」と適当に考えていました(何だそれは)。どうせなら、何年何月号とまで書いてくれればよかったのに(笑)。
そんなわけで、本編の伊藤果の詰将棋は45ページになってやっと始まります。その後の伊藤果の本に採用されている作品も数多くあり、絶版なんだということを強く感じさせてくれます。
伊藤果の作品の特徴の一つは右のような作品に現れているそうです。この問題のヒントは「通常の概念を捨てろ」ですが、まさしくその通りという展開です。
それにしても、よく「3・4・5段」というくくりで本を出したなぁと驚きます。他にあるでしょうか?私は知りません。右の詰将棋が「10分で3段」と言われてもぴんときませんね。
上の作品の解答は、
▲4二飛 △2二金 ▲同飛成 △同玉 ▲2一金 △同玉 ▲4一飛 △3一銀 ▲1一金 △3二玉 ▲4二金 △同銀 ▲2一飛成 まで13手詰。
下の作品の解答は、
▲4二角 △2一玉 ▲3一金 △1二玉 ▲1一金 △同玉 ▲3三角成 △1二玉 ▲1一金 △1三玉 ▲2四馬 △2二玉 ▲2一金左 △3二玉 ▲4二歩成 まで15手詰。