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長手数への入口

詰将棋探検隊  角 建逸著 週刊将棋編 毎日コミュニケーションズ 1995年

何度か書いてきているとおり、詰将棋には二種類があります。指将棋の訓練に役立つものと役立たないものです。私はここで断言します。指将棋に役立たない詰将棋の方が、ずっと深い世界を秘めているのです。しかし、そのことは一般の将棋ファンにはあまり知られていません。なぜ詰将棋といえば指将棋の終盤のためのものとしか見られないのか。それは本物の傑作を見ていないからでしょう。

山本民雄作 15手詰

詰将棋の傑作がたくさん載っている本は、一般書店にも少しは売られています。しかし、例えば『看寿賞作品集』は3,800円、『詰むや詰まざるや』(東洋文庫版)は2,400円など気軽に読むには値の張るものが多く、詰将棋を知らない人が手に取ることはあまり期待できません。そんな中この本は本体定価1,165円と普通の将棋本並の値段となっていて、詰将棋の世界への入口として最適といえるでしょう。

この本には古今の名作が百番収められています。各章は初形趣向や構想作といった分類ごとにまとめられており、全体を通して「詰将棋史」がおぼろげに見えてきます。例えば「遠打」の項では、三代伊藤宗看の『将棋無双』第十番に始まり、右図の山本民雄氏作11手詰(詰将棋パラダイス昭和45年11月号)に見られる近代的な表現に連なる系譜が感じられます。


原潜作 33手詰

この本の最大のセールスポイントは、長手数詰将棋がどのように作られているのかを具体例を出しながらわかりやすく解説したことでしょう。長手数詰将棋の手順というのは、短篇にありがちな複雑な変化読みが何百手も続くわけではありません。長い手数をかけながら局面を微妙に変化させていくことによって最終的に詰みに至るのです。その微妙に変化する様子は、例えば、橋本孝治氏作の1525手詰「ミクロコスモス」を並べると感じ取ることができます。

「ミクロコスモス」をはじめとした超長手数詰将棋でしばしば用いられる手法に「持駒変換」というものがあります。右図は原潜氏作33手詰(詰将棋パラダイス昭和42年1月号)です。この詰将棋の手順を16手進めると、盤面の状態が元に戻ってしまうのですが、代わりに持駒が飛歩歩歩→飛香香歩となっているため詰みへ向かうことができるようになるのです。

このように超長手数詰将棋を構成する一つ一つの要素を、もう少し簡単な作品で解説してくれるというのは、初心者にとって非常に親切で、なかなかできないことだと思います。これだけ楽しめておよそ1200円というのはお買い得ですね。

問題は、現在では入手しにくくなっていることです。少し前までは書店に新刊が残っていたと思うのですけれども。



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written by mozu

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