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詰将棋をたのしむ本  村山隆治 金園社 1986年

突然ですが、どうして詰将棋は難しいのでしょうか

少し考えるとこれは質問がおかしいことがわかります。たくさんある「詰む局面」のうち、簡単ではないものでないと詰将棋とは呼ばれないわけですね。そこで質問を換えてみましょう。実戦に生じる難しい詰手順と、詰将棋との違いは何でしょう。

これなら簡単に答えられますね。詰将棋は作者が考えたある狙いが含まれているのです。例えば、簡単には思いつかない妙手、様式美を備えた一連の手順、初形の構図の美しさなどです。詰将棋を解くという行為は作者の狙いを理解することでもあるのです。

 136頁第13図 

そのような狙いのなかで最もよくあるのが捨駒です。どうしてわざわざ駒を捨てないと詰まないようにできているのか考えたことがありますか?

なぜ捨駒をするのか。その意味づけには古くからいろいろなものが考えられています。右図をご覧下さい。▲2三金 △同玉 ▲3二銀打 △1三玉 ▲2三金 までの5手詰です。初手で金を捨てなければ詰まないのは、玉が2二にいるよりも2三にいた方がずっと詰みやすいためです。これは玉を詰みやすい位置に誘導する捨駒といえます。


 72頁第9図 

詰将棋に頻繁に出現するのに実戦ではめったにお目にかかれないものとして、打歩詰があります。打歩詰は、玉方に比べて攻方の勢力が過剰であるために起こります。そこで、捨駒の登場となるわけです。

右図をご覧下さい。これは、▲2四桂 △同銀 ▲1三歩 △同銀 ▲1一銀成 までの5手詰です。玉を包囲しているものの▲1三歩が打てないため、わざわざ銀を呼び寄せて敵の守備力を高めることが必要になるのです。 そのほかに、打歩詰を解消するための捨駒は、玉の逃げ道を開けるためのもの、自分の駒の働きを弱めるためのものなどがあります。

このような手筋の形態を体系的にまとめたのがこの本です。他にも、邪魔駒のある形や、合駒の出てくる形など様々な分類の例題があり、そのような手筋を含む名局も紹介されています。

この本は絶版ですが、著者が大幅に加筆修正した本が「詰将棋手筋教室」という書名で毎日コミュニケーションズから発売されていて、こちらはまだ手に入ると思います。



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written by mozu

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