時には読む方の役に立つ紹介をしようかと思い、矢倉を学ぶのに役立つ本を、1990年以降に出版されたものに限ってまとめました。
他にもこんな本があるよというご指摘を歓迎します。
独断に基づいたおすすめの順に並んでいます。
私はこの本のおかげで矢倉党になったといっても過言ではありません。最新の(もちろん正確には1999年当時の最新の)戦形が一通り解説してあり、評価が定まっていない局面でも森下の個人的な見方がはっきりと述べられています。現代矢倉党のバイブルです。
ただ、森下のように受けの得意でない人は、形勢判断を少し修正する必要があるかもしれません。
矢倉だけではありませんが、最新形をコンパクトにまとめてあります。矢倉にはまるごと一章を割き、ポイントとなる局面を一つ一つ丁寧に解説しています。最新形は指さないという人も、知らなければ避けることもできませんから、買って損はないと思います。
しかし、こういう本は活躍中の一人の棋士が身を削って書くのではなく、アマチュアや引退した棋士がチームを組んで、定期的に書くようにしてほしいなあ。贅沢でしょうか。
プロレベルでは、昔よく指されていた戦法が、いつの間にか指されなくなることがしばしばあります。そのような戦法を振り返り、転機となった将棋を紹介するのがこの本です。これも矢倉だけではありませんが、5手目▲7七銀がなぜ廃れたのか、後手急戦がなぜあまり採用されないのかなど、知っておいて損のないことばかりです。
矢倉党でなくともお薦めの一冊です。
この文章を書くために奥付を見ていて、この本がこんなに古かったかと驚かされました。ここ数年の矢倉定跡の飛躍的な進歩にもかかわらず、それほど内容は古くなっていません。
この本の特徴はカバーされている範囲の広さです。さすがに現在の最新形は書いてありませんが、当時の最新形に踏み込みすぎず、羽生独自の感覚に基づいた柔軟な手順を書くという姿勢がこの本を名著にしています。定跡とされている手順から少しはみ出したときどうするのかを考える上で、欠かせない本だと思います。
これは定跡の本ではありません。矢倉戦における手筋、寄せ方、詰め方の実例集です。
さすが谷川だけあって、いい問題が多いと思います。また、後半の谷川の実戦集はファンにはたまらないでしょう。
現在の矢倉の中心となっている▲3七銀戦法に絞って、後手が最もよく指す△6四角「以外の」応手について解説した本です。値段の高さとともに、この本を買うようでは矢倉マニアも極まれりという感を抱かせます(私のことですが(爆))。
下巻が出ればいち押しになるのではないかと期待しているのですが、いつになったら出るのでしょう。
タイトルの通り、脇システムを解説した本です。形勢判断が先手側に有利になっているように思いますが、脇システムは、意外に出現率が高いので一度押さえておくことをおすすめします。
佐藤の矢倉の実戦をまとめたものです。その実戦特有の中盤まで解説してあり、定跡本としては価値が落ちると思います。
ただ、第3巻の急戦編は、他に詳しい本がないので有用です。
当時の最新形を詳しく解説してあります。新しい本と比べると、矢倉定跡の進化がよくわかります。
量的には少ないですが、作戦の一つとして押さえておきたいものです。
田中寅彦九段の開発した戦法集です。矢倉ばかりではありませんが、無理矢理矢倉、矢倉早囲いなど、アマ間では意外に出現率の高い形です。
少し古い矢倉の名局を集めたもので、自戦記形式になっています。定跡の習得には役立たないと思いますが、棋譜鑑賞として見れば面白いかもしれません。
矢倉の定跡を次の一手形式で解説してあります。定跡本だと思わずに、純粋な次の一手問題と思えばそれなりに面白いかもしれません。