chaos
chaos [ケイオス/かおす]
日本語に訳すと「混沌」や「無秩序」という意味です。カオスは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのポアンカレの研究以来、カオス概念が研究の表舞台に登場してきました。
カオス現象は、日常的に起こるごく自然の現象でもあります。風にながれる雲、落ちてくる雨、ゆるやかな川の流れ。これら自然現象全てがカオス現象です。カオス現象は、自然物、人工物を問わず非線形システムにごくごく当たり前に生じる現象です。
カオスの定義は様々な研究者によってなされていますが、それらを総じて要約すると、カオスとは、
「決定論的なシステムがつくり出す非周期振動」という現象であるといえます。ここでいう決定論システムとは、破ることができない不変の法則からなる系という意味であり、非周期振動というのは、専ら偶然に支配される確率論的な運動という意味です。
すなわちカオスは、不変の法則に支配される系にありながら法則性のない予測不可能な非周期的振舞いということです。
カオス理論
従来の物の考え方というのは、制御や予測が可能なもの以外は、混沌や無秩序の中にあるという単純な二項対立的なものでありました。しかし、理想化された直線的な線形システムだけが世の中に存在するのではなく、現実は非線形であり、これらも方程式で表わすことができるというのがカオス理論の根幹であります。
しかも、その決定論的な構造を理解することによって、予測不可能と思われていた事象についても我々人間が予測・制御できるのではないかということが、人間の世界観を大きく変える現象としてカオスが注目されている所為なのであります。
しかし、カオスという言葉をきちんと定義すること自体でさえ大変難しい問題であるほどカオス理論は今だ発展途上の研究分野であります。
前述しましたが現在、決定論的力学系に見られる不規則でかつ複雑な軌道が、一般的にカオスと総称されています。
カオス工学
カオスやフラクタルを中心とする非線形理論の高度な工学的利用を目指した新
しい学問基盤。カオスの応用可能性とその限界を明らかにし、さらには、カオスの基礎研究として制御理論、予測理論、計算理論などの工学基礎理論とカオスとの関わりを研究することを目的としています。
応用分野 これまで、実際に研究されてきたものや、研究中であるものを載せておきました。
部屋の照明機器 |
噴水の制御 |
大型コンピュータのテスト用ランダムベクトルジェネレータ |
電子ルーレット |
多値論理システム |
ふるまいの中に情報を蓄えるカオスメモリ |
暗号器 |
情報圧縮機 |
高感度センサ |
家電(扇風機、洗濯機、ミキサーなど) |
カオス音楽 |
フラクタル画像処理 |
電力需要予測 |
天気予報 |
実社会への応用
さて、このカオス理論が実社会においてもたらしている影響とはなんでしょう?まずは、エアコンの制御。「f分の1ゆらぎ」に基づいたルーバーの動きを生み出したのは、ロレンツの方程式を使ったもの。一般に電子回路でカオスは容易に作り出せます。
また、運輸省船舶技研が1994年9月にバルト海で沈没したエストニア号についてシミュレーション実験を行う中で、沈没原因とカオスとの関連が明らかになってきています。
カオス理論の「初期値がずれると時間とともにそのずれが急激に成長していくが、ある臨界時間以下の範囲では価の予測は可能である」という考え方を応用して太陽の黒点の変動、ニューヨーク市のはしかの患者数の増減、天気予報の精度の予測などが研究されています。経済分野への応用の研究されていますが、その実用性は不明です。
脳、ひいては人工脳の研究分野でもカオス理論は取り入れられています。脳というのは非線形のシステムであります。一つの絵を見せても、人によって二通りの解釈ができるという実験(貴婦人と老婆のどちらにも見える絵は有名)からも脳の働きはその非線形性を研究することで大きく進歩すると思われます。
パラダイムの転換は、線形から非線形へ、要素還元論からカオスネットワークを利用した構成論を加えた非線形要素還元論へ、という変化の中で進んでおり、既存の学問の分野を越えた様々な領域で、カオス理論による世界観の転換が起こっています。
カオス理論の解説は広範囲にわたっており、一つにまとめるのは困難な為、個別にもう少し突っ込んだ解説をしていきます。
尚、ここまでで、眩暈や頭痛、吐き気や悪寒等の症状が出た方にはお勧めしません(汗・・。