ド・モアブルの定理 
■指数法則
本題に入る前に、表記に関する約束をしておく。 
複素数Z、自然数nに対して、Z=1 Z−n=1/Zと定義する。
自然数n、mに対して、 
(1)Z×Z=Zn+m 
(2)Z÷Z=Zn−m(n>m) 
(3)(Z=Znm 
という指数法則が実数の場合と同様に成立するのはすぐ分かるだろう。
しかし、n≦m 即ち n−mが負の整数か、0の場合にもこの表記が成立するようにしたい。その為に、前記のような規約を設けたのである。
n<mの時、m−n>0で、計算からZ÷Z=1/Zm−nであるから、 
−(m−n)=1/Zm−nと定めてやれば、Z÷Z=Zn−mという表記は意味を持つことなる。
また、n−m=0つまり、n=mの時は、Z÷Z=1であるから、Z=1と定めてやれば、同様にZ÷Z=Zは意味を持つのである。
上記の定義に従えば、全ての整数n、mに対して(1)〜(3)が成立することも検証できるが、ルーチン・ワークなので省略する。
■ド・モアブルの定理
さて、前節「複素平面と極形式」において紹介した複素数の極形式を用いた便利な定理を紹介しよう。ド・モアブル(de Moivre 1667-1754)が証明した有名な定理である。
[ド・モアブルの定理]
任意の整数nに対し、 
(cosθ+sinθ=cos(nθ)+sin(nθ)が成立する。
 
(証明)
nが0、1の時は明らかに成立する。 
以下、nを自然数とし、n=kの時成立すると仮定して、帰納法を用いる。
 (cosθ+sinθk+1=(cosθ+sinθ・(cosθ+sinθ 

={cos(kθ)+sin(kθ)}・(cosθ+sinθ 

 (∵ 帰納法の仮定 

= cos(kθ+θ)+sin(kθ+θ) 

 (∵ 前節の偏角に関する等式。展開し、加法定理を用いてもよい)

∴(cosθ+sinθk+1=cos{(k+1)θ}+sin{(k+1)θ}で、 
n=k+1の時も成立する。よって、nが自然数の時、定理は成立する。
次に、(cosθ+sinθ−n=1/(cosθ+sinθ 
              =1/{cos(nθ)+sin(nθ) 
は定理の前半の結果から成立する。
cos(−nθ)+sin(−nθ)を上式の右辺の分子と分母に掛けると、
(上式の分子) 
=1・{cos(−nθ)+sin(−nθ) 
=cos(−nθ)+sin(−nθ)
(上式の分母) 
={cos(nθ)+sin(nθ)}・{cos(−nθ)+sin(−nθ) 
= cos{(nθ)+(−nθ)}+sin{(nθ)+(−nθ)} 
= cos0+sin0・=1+0・=1
ゆえに、(cosθ+sinθ−n=cos(−nθ)+sin(−nθ)
前半の結果と合わせれば、任意の整数に対し定理は成立することが示された。 
(証明終わり)
次節ではド・モアブルの定理を応用して、代数学において基本的な役割を演ずる方程式を解けることを示したい。
 
 (1999.5.10 高林廉)  
 
複素平面と極形式(1)
複素平面と極形式(2)
n乗根(1)
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