マドラシは指将棋には絶対にできません。次のようなルールです。
「同種の敵駒が互いの利きに入ると、利きがなくなる」
もし、指将棋でこのルールを使うと、突いていった歩がすべて固まってしまい何もできなくなるでしょう。よくわからない方は次の図をご覧下さい。
29桂 28玉 37角 18玉 19飛 までで、一見普通のばか詰めに見えるかもしれません。しかし、初手で 49桂 ではなぜいけないのでしょうか?それでは、マドラシ特有の粘り 29飛 と打つ受けを与えてしまうのです。攻方の 19飛 と玉方の 29飛 は同じ種類の駒で、しかも互いに利いているので、どちらも動けません。それで、 19 の飛は玉を取れなくなってしまうのです。対面のときとと似たような受け方ですね。
ここで、 46歩 が何のために配置されているのか気になった方がおられるかもしれません。もし 46歩 がないと、 37角 の代わりに 46角 でも 91角 でもよいことになります。このような打ち場所の非限定は、普通詰将棋では許容されますが、ばか詰などのフェアリーでは許されません。
35飛成 39飛成 65角成 29角成 38桂 までの5手詰ですが、この詰め上がりは分かりますか?38桂 と打つ前は、双方の龍・馬がそれぞれ互いの利きに入って動けなくなっていました。ところが、38桂 と打つことによって龍・馬の利きが同時に復活したのです。つまり、38桂 はマドラシ特有の両王手になっているのです。後手は同龍としても同馬としても、両方の王手を一度に消すことはできないのをご確認下さい。
この問題で、もし持駒が桂でなくて歩だったとすると、最終手 38歩 は打歩詰になります。他の安南などのルールでも、こうした間接的な打歩詰は起こり得ますので注意して下さい。
なお、成駒は生駒と別の種類と見なします。飛車と龍が向かい合っても利きは消えません。上の例で言えば、2手目に 39飛生 では王手を消すことはできません。
攻め方にも玉がいる場合玉同士の利きが消えるのかは、どちらも作例があり一概に決められません。このホームページでは、Onsite Fairy Mate にならって、玉同士の利きが消えるのを「Kマドラシ」、消えないのを「nonKマドラシ」と呼ぶことにします。Kマドラシでは、玉と王が隣り合ったマスに来ることが可能です。単に「マドラシ」と呼んだ場合には、どちらでも同じ結果になるものと思って下さい。
慣れないうちはかなり複雑で戸惑いますが、とても面白いルールです。
「駒が取られると将棋での指し始め位置に駒が戻される。 戻せないときは持駒になる。」
疑問がいくつか生じると思いますが、順に説明していきます。
29香 28香 同香/11香 27香 同香 15玉 16香 まで。
まず 29香 28香 に 同香 と取りますが、後手の香は取られると先手の持駒になるのではなく、普通の将棋の初形で香のある位置、つまり 11 に戻されてしまいます(もう一つ 91 もありますが、取られた位置に近い側に戻されます。)。この移動は後手の一手のうちには入らずに、自動的に行われます。そこで、この動きを 同香/11香 と表記します。次に、27香 同香 となりますが、このときは 11 がふさがってしまっているので戻せません。このときは、香は先手の持駒になります。 91 に戻されるわけではないことに注意して下さい。
このように、キルケで合駒を取って自分の持駒にするには、通常の2倍の手間がかかりますが、とにかく、香の持駒が手に入り、 16香 で詰みとなります。これを 同玉 と取ると、取られた香は自動的に 19 によみがえり、次の先手の手で 同香 と玉を取れてしまいます。
最終手 16香 で 17香 や 19香 でも同じかというと、そうではありません。このようなフェアリーでは、普通の詰将棋と違い無駄合という概念はないので、16歩 の合駒で手数を延ばされてしまうと解釈します。そこで、合駒を許さない 16香 の短打のみが正解となります。
なお、成駒が取られた場合には、生駒として戻します。例えば、成香が取られたら、香として戻します。
さて、金銀桂香は戻される位置が2カ所あります。5筋で取られた場合はどちらも同じ距離になりますが、その場合は取った側が好きな方に戻すことになります。ばか詰の場合には、「解いている人の好きな方」と思ってだいたい間違いありません。ただし、一方だけがふさがっている場合は持駒にすることはできず、空いている側に戻すしかありません。
歩は、取られた筋の3段目に戻すことになりますが、と金が取られた場合には戻すと二歩になってしまうことがあります。そのようなときは、持駒になります。
先手の玉が取られたら 59 に戻すというルールはKキルケと呼ばれますが、こうすると王手がかけにくくなってしまうので、戻らないとするのが一般的です。ここでも、単にキルケといったら玉は戻らないものとお考え下さい。