Roger Zelazny 作品書評1 


『伝道の書に捧げる薔薇 / THE DOORS OF HIS FACE,THE LAMPS OF HIS MOUTH』
(1971)
ハヤカワ文庫SF215
(訳:浅倉久志・峯岸 久 / 1976.11.15)

■収録作品
その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯     
  / The Doors of His Face,The Lamps of His Mouth」(1965)
十二月の鍵 / The Keys to December」(1966)
悪魔の車 / Devil Car」(1965) 
伝道の書に捧げる薔薇 / A Rose for Ecclesiastes」(1963) 
「怪物と処女 / The Monster and the Maiden」(1964)
「収集熱 / Collector's Fever」(1964)
この死すべき山 / This Mortal Mountain」(1967)
このあらしの瞬間 / This Moment of the Storm」(1966)
「超緩慢な国王たち / The Great Slow Kings」(1963)
「重要美術品 / A Museum Piece」(1963)
「聖なる狂気 / Divine Madness」(1966)
「コリーダ / Corrida」(1968)
「愛は虚数 / Love Is an Imaginary Number」(1966)
「ファイオリを愛した男 / The Man Who Loved the Faioli」(1967)
「ルシファー / Lucifer」(1964)

■作品書評
ゼラズニイの初期作品集である。買って絶対に損はない。収録作品は1963〜68年に発表され
た中短編15編で、そのうち6編がヒューゴー/ネビュラ賞の候補に挙がり、原題表題作はネ
ビュラ賞ノヴェレット部門を受賞している。受賞及び候補作を中心に収録作品を紹介する
末尾の括弧内の点数は最高点を10点とし、僕の独断と好みによる個人的作品評価点である。

「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」
1965年度 ネビュラ賞ノヴェレット部門受賞    
1966年度ヒューゴー賞ショート・フィクション部門候補(3位)
●あらすじ&寸評
金星の大海原に棲息する古代巨大魚竜イクティオザウルス(通称イッキー)。かつて、全財
産をなげうち、その捕獲を試みようとした餌つけ人カールトン・ディヴィッツ(カール)は
ハルリック産業の令嬢ジーン・ルハリックに雇われ、イッキーと再び対峙することになる。
ゼラズニイ独特の詩的な金星の風景描写は秀逸。捕獲船テン・スクエア号でのイッキーとの
死闘もさることながら、雇い主の美女ジーンとカールの関係の行方も見所である(8点)。

「十二月の鍵」
1967年度ネビュラ賞ノヴェレット部門候補(2位)
●あらすじ&寸評
ジャリー・ダークは寒冷惑星種猫形態という人ならざる姿に改造され、唯一適応できる惑星
アリヨナールも失っていた。企業の保護下で隔離生活を強いられるジャリーと婚約者サンザ
は数万の同胞と十二月クラブを結成し、やがて資金を貯め購入した惑星の改造に着手する。
3千年を掛けた惑星寒冷化を2人は冷凍冬眠を繰り返しながら、監視してゆくのだが……。
猫形態(キャットフォーム)の恋人たちジャリーとサンザがとても活き活きと魅力的に描か
れている。不死性と人間の有限性の同居したゼラズニイのキャラ典型がここにも見られ、変
貌を遂げてゆく生態系に向けられた主人公らの視線は文明への警鐘を孕んでいる(10点)。

「悪魔の車」
1965年度ネビュラ賞短編部門候補(9位) 
●あらすじ&寸評
思考し、人間を殺戮する車たちがのさばる世界。サム・マードックは復讐の為に設計した愛
車ジェニーを駆り、デビル・カーと呼ばれるリーダの黒いキャデラックを探し求めていた。
サムの車は紅く、兵器を搭載されたセダン型。ちょっと勝ち気だが、主人思いでイカした美
貌のレディ。ナイト2000の先駆け(笑)。その会話は軽妙で臨場感に溢れている(8点)。

「伝道の書に捧げる薔薇」
 1964年度ヒューゴー賞ショート・フィクション部門候補(3位)
●あらすじ&寸評
荒廃した火星、少数の火星人が古き伝承と共に暮らす都ティリアン。若き詩人ガリンジャー
は寺院に秘蔵された書物の閲覧を許され、火星言語の研究に没頭する。美しい踊り子の少女
ブラクサとの間に恋が芽生え、ガリンジャーは蜜月の刻を過ごす。だが、歴史書の記す火星
文明の衰退に関わる記述が彼の心を捉えていた。やがて地球帰還の期日が迫って来る……。
ゼラズニイの詩や文学、神話や宗教への造詣が遺憾なく発揮された魅力的な編である。隠
喩や比喩など文体が冴え渡っている。主人公が火星人へ語り掛けるシーンは圧巻(9点)。

「この死すべき山」
 1967年度ネビュラ賞ノヴェレット部門候補(5位)
●あらすじ&寸評
登山に人生を賭け、あらゆる栄光を手中に収めてきたクライマー、ホワイティことジャック
・サマーズ。隠退から4年。惑星ディースルにある宇宙最高峰の未踏山「灰色の乙女(グレ
イ・シスター)」を踏破せんとジャックは決意する。最高のパーティを呼び集めるが……。
孤高のクライマー、ジャックの登山への想いは胸を打つ。登攀作業はリアルで、息遣いに溢
れ、緊張感がある。超然としたものに立ち向かう人間の根元的なロマンがある。(9点)。

「このあらしの瞬間」
1967年度ヒューゴー賞ノヴェレット部門候補(9位)  
1966年度 ネビュラ賞ノヴェレット部門候補(5位)
●あらすじ&寸評
ティエラ・デル・シグナス(白鳥の国)という地球植民惑星。ゴッドフリー・ジャスティン
・ホームズは、ベティの愛称で呼ばれる都市ベーター・ステーションの監視官である。都市
の治安維持の為、電子アイで警戒する役目を持つ彼は、暴風の接近を探知するのだが……。
示唆に富む哲学的命題と形容に満ちた佳作。「人間は、彼がこれまでにしたこと、したいと
思い、あるいはしたくはないと思うこと、すればよかったと思い、あるいはしなければよか
ったと思うこと、それらすべての総和である」──彼の人生はここに集約される(8点)。
 
 (1999.1.22/ 4.28 改訂 / 5.26 補追 高林廉)

 
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