『光の王 / LOAD OF LIGHT』
(1967)
ハヤカワ文庫SF625
(訳:深町眞理子 / 1985.
8.31)
■あらすじ |
遠未来、宇宙へと植民した人類たち。第一世代と呼ばれる惑星植民者たちは、自らをインド
神話の神々になぞらえ、天上都市を建設した。第一世代は過去の科学技術や知識を制御し、
古代インドの如き原始都市に住む民衆たちをカースト制度で支配していた。第一世代は人格
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の肉体への移植による転生を繰り返し、不死を得た神々に等しかった。神々のひとり、マハ
ーサマートマン、シッダルタ、如来などと呼ばれる男サムは、束縛と思想統制する管理社会
に疑問を抱き、天上都市に反旗を翻す。かつての仏陀のように、仏教の教えを説き、民衆の
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支持を集めるサムに創造神ブラフマンらは刺客を仕向け、促進主義者サムを葬ろうとする。
死神ヤマ、破壊と殺戮の女神カーリー、火神アグニ、破壊神シヴァ……象徴的能力を可能と
する科学武器を操る特異な超能力を有した神々と、サムたちの死闘が繰り広げられる……。
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■作品書評 |
1968年度ヒューゴー賞長編部門受賞
1967年度 ネビュラ賞長編部門候補(4位)
1975年度 ローカス賞オールタイム・SF長編部門候補(10位)
1987年度 ローカス賞オールタイム・SF長編部門候補(11位) |
ゼラズニイの初期傑作長編。作者紹介でも触れている通り、長編の第1章と第3章に当たる
部分が単行本化に先駆けて、F&SF誌に分載された。文庫でおよそ470ページに及ぶ大
著。昨今は珍しくない分量だが、長編でも比較的コンパクトな長さを好むゼラズニイにして
は希有なことである。だが、無駄な部分はない。これだけ枚数を費やしたからこそ、インド
神話とSFの見事な融合がなされたといえる。絢爛たるインド神話の世界。SF的設定が自
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然な形で溶け込んでいるので、古代叙情詩を読む如く物語は語られる。ゼラズニイはその諸
作で、社会と個人の対立、男女の恋愛関係をよく扱う。本書もサム、カーリー、ヤマという
個性的で魅力あるキャラたちの対立と接近関係が描かれている。神々の名前は、仏教とヒン
ドゥ教の両面のそれらが表現を変え、至る所に現れるので、好きな方には堪らない(笑)。
ゼラズニイの初期テーマ「神話とSFの融合」の一つの完成型として絶対にお薦めである。
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しかし、どうしたものか目録落ち(泣)。古本屋などで見つけたら即ゲットしかない! ち
なみに、HPの表紙で僕が引用しているシーンは天上神たちとサム一派の対決のクライマッ
クス突入前の静謐としたシーン。スランギーと叙情性、ゼラズニイの素晴さを堪能できる。
なお、表紙カバーは萩尾望都さんの美麗イラストで飾られていて、イメージが喚起される。
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(1999.1.28
/ 4.28 改訂 / 5.26 補追 高林廉)
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