俺がひびきの高校に入学してからはや1年、今日から2年生だ。
かったるい始業式もようやく終わり(といってもほとんど寝ていたが)、新しい2年生の教室に入った。新しいイスにつき、純や匠と一通り話し終えてゆっくりしていると、俺の背後から声が聞こえてきた。
「おっす!なんだ、おまえと同じクラスかよ」
「あ、赤井さんおはよう。これからもよろしく!」
「おう!それより、おまえ茶道部だろ。よくやるよなぁ〜あんなかったりーこと」
「まあな、日本人の心ってやつだ」
俺がそういうと、赤井さんはぼりぼりと頭を掻いて首をかしげた。
「なんだかよくわかかね〜なぁ。まあいいか、それより部費ちゃんと獲得できそうか?」
「えっ?そのへんのことは部長の水無月さんがなんとか交渉してくれてると思うけど」
俺がそう答えると、赤井さんはびっくりしたような顔になった。
「えっ!おまえ知らなかったのか!?今年の部費はマージャンで勝ったらもらえるんだぜ」
「なにぃ!!」
俺は赤井さんの意外な一言に耳を疑った。
「そ、それは本当か?赤井さん」
「あたりまえだろ、あたいがうそついたって仕方ないだろ」
赤井さんの話を聞いた俺は、非常に不安になった。
「水無月さんはこのことを知っているのだろうか?」
そのことも気になるが、もっと気になることがもう一つ
「水無月さんは、マージャンなんかやったことがあるのだろうか?」
それこそが最大の問題だった。
「あ、赤井さん、そのマージャン大会のルールってどうなってるんだ?」
「さ、さあな。あ、あたいはよく知らないんで、なんかふたりタッグの勝ち抜き戦とかなんとか…」
「勝ち抜き戦?」
「あ、ああ…それ以上はあたしも知らないな。じゃ、じゃあな!」
「あ…」
(赤井さん、行っちゃったよ…)
走り去る赤井さんの後ろ姿を見送りながら、俺は非常な不安感にさいなまれていた。
マージャン大会で部費が決まるだと!
ふたりタッグの勝ち抜き戦だと!
もしそれが本当だとしたら大変だ!!
それより水無月さんだ。部員が二人しかいない以上、なんとかして彼女に出てもらうより仕方ない。
我が茶道部はどうなるんだ!
そんな不安に俺はさいなまれ、担任の先生の説明もほとんど上の空で、終礼と共にばっと教室を飛び出した。