ひびきの高校「部費争奪」マージャン選手権




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Chapter2 水無月琴子立つ

「知ってたわよ」

茶杓にすくったお茶の粉末を茶碗に入れながら、水無月さんは言った。

「あの校長も何を考えてるのかしらねぇ。突然マージャンだなんて」

「まったくだ、どうしてマージャンで部費を争うんだ。」

若干怒りの様相を見せる俺を尻目に、水無月さんは茶釜から湯を取って茶を立て始めた。
ちなみにこの茶釜はかの有名な「分福茶釜」ではないかといわれているが、俺は骨董品の目利きではないのでよく分からない。まあこんなところにそんな価値のあるものがあるはずがないとは思うが。

「さあねぇ、どうせまた校長か赤井生徒会長の思い付きじゃないの?はい、どうぞ」

そう言うと水無月さんはお茶を立てた茶碗を俺にすすめてくれた。
ちなみにこの茶碗は無一文茶碗という銘がついているらしい。見た目にも、名前からしてもただの安物の茶碗のようだが、実はこれも大変な価値があるという噂らしい。

「結構なおてまえで」

そういうと俺は茶碗の中の緑色の液体をずずずっ、とすすった。だいぶ慣れたとはいえ、やっぱり苦い。

それにしても、茶室といい、茶器といい、ここの茶道部はちょっとバカにならない。水無月さんご愛用のうぐいす茶杓(彼女が命名)もそうだが、ここの茶器はすべてなにやらバカにならない値打ちものが多い。花を生けてあるこの花瓶といい、水指しといい、水筒といい、花入れといい、すべて見る人が見ればそれなりの価値のある代物らしい。 まあ、おれにはデパートの安売りとどう違うのかはよく分からないのだが、少なくとも言えることは、ここの茶道部は「金がかかっている」ということである。

「で、もちろん大会には参加するんだろ?」

俺がそう聞くと、水無月さんはお茶請けの羊羹を食べながら答えた。

「仕方ないじゃない。たった二人とはいえ、部費がもらえないんじゃ茶道部はやっていけないじゃない」

「ああ、俺も冬にコタツには入れないのはご免こうむりたい」

そう、一見してお金など使いそうにない茶道部なのだが、実は夏冬の空調費、光熱費、茶葉代や水道代などこれはこれで結構お金がかかるのである。

「そのためにも、部費の満額解答を勝ち取らねばならない!」

「あら、自信たっぷりじゃない」

「ふふふ…自慢じゃないが俺のマージャン暦は10年だ」

そう、俺は六つの時にクソおやじによって徹底的にマージャンのイロハをしこまれた勝負師だ。学校から家に帰ればファミコンの四人打ちマージャンで半荘打ってアホなコンピュータどもを蹴散らしてから光と遊んでいたのだ。 実は俺がいた中学ではめちゃくちゃマージャンがはやっていて、俺はそこで連戦連勝を重ねた伝説の雀師としてちょっとは有名だった存在だ。ついでに言うと深夜の賭けマージャンのし過ぎで遅刻の回数と停学の回数でも有名だったが。

「それで…一応聞いておくが…」

大体答えはわかっていたが、俺は水無月さんに聞いてみた。

「水無月さんは、マージャンやったことはあるの?」

「ないわ、もちろん」

「そうか」

「そういうわけだから、あなたに全てお任せするわ」

「ところが、そういうわけにもいかないんだなぁ」

そう、このマージャン選手権はそれぞれの部で代表2人1組で、部ごとの勝ち抜き戦である。すなわち、各部活とも名うてのつわものがエントリーするだけに、片方が強いだけでは勝ちぬくことはおぼつかないのである。

「あら、私も出るの」

「さよう。というわけなので明日から特訓だ」

「…いやよ、そんなの」

「水無月さん。きみは、夏場に扇風機なしで部活をする気かね?」

「…」

その後、俺の水無月さんに対する説得は30分に及んだ。水無月さんはなかなか首を縦に振らなかったが、俺の懸命な説得に、ついに水無月さんも折れた。 こうして、俺と水無月さんの茶道部コンビが、ひびきの高校部費争奪マージャン選手権に向けて始動した。だが、何といっても水無月さんは素人だ。選手権まであと1週間、これからやらなければならない事はあまりにも多い。だが、俺と水無月さんならやって行けると思う。

いよいよ、俺たちの戦いの始まりだ。

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