(p06)第一章 黎明紀2

 バン国はBC七千年期の洪水で海没したヒンドスタ ン平原から逃れてきたアスカ人の住民が作った新興 都市だった。
 インド地方はアスカ人が移住するようになってから まだ数百年しか経っておらず、人口が過疎状態だっ たところに洪水のため多くの人民を失い、深刻な人 口不足に悩んでいた。バンの国王は移住を歓迎する 意向を示した。
 バン周辺には比較的温厚なドラビダ系の民族が狩 猟採集生活をしていた。
 彼らはもともと地中海沿岸に住んでいたが、海進と アトランティス系の海洋民族の侵略のために故地を 離れこの地までやってきた。
 ドラビダ人のインド侵入はBC九千年頃で、彼らは 先住のネグリト族を駆逐しながらインド全体に居住す るようになった。
 彼らはアスカ人の生活形態になじまず、肉類や岩 塩を持参し穀類や衣類と交換して帰るだけの交流を していた。
先見隊の報告を受けた御子は五万人を移住させる ことにした。
移住民達はバンから二百キロ離れたバラナシに植 民都市を建設した。
 都市は周辺の未開人の襲撃を防ぐために、城壁で 囲まれた。

BC六千五百十五年、その都市は完成し、ガンジス 川と支流との細長い川洲の先端に築かれたので角 蛇(ツナガイ)と名付け、新たなる流民や旧常立の支 配者階級を送り込んだ。
ツナガイの町はほどなくして都市国家に発展し、名 称も短縮化されて「ナーガ国」と呼ばれるようになっ た。
 ガンジス川周辺の自然環境は中国大陸の抗州の 地よりもより過酷だった。
 昼夜の温度差は激しく、虎やライオンなどの猛獣も 脅威だった。
 一番困ったのは、持参したジャポニカ種の水稲の 成育が土質の違いにより思わしくないことだった。
 そのため、小麦・大麦・粟・黍などの穀類に主食を 頼らざるを得なかった。
東シナ海大陸の海没以降のアスカ人の文化は環境 の劣化のために停滞したが、唯一宗教のみが発達 した。
日子を中心とする従来の太陽信仰は、インドではハ ラ(晴ら)の神、のちのビシュヌ神の原型を生んだ。
日子は太陽の子孫であり、最高の神官だった。
 その日子は沖縄のアメの常立におり、中国大陸で の代理者御子はニライカナイにいた。
ところが、宗主不在のナーガ国では、従来の信仰に 同調しない者も現れて、カリ(枯り)の神を信仰した。
 ナーガ国の政治・経済はニライカナイから派遣され た官僚階級のハラ派が握っていた。カリ派は旧常立 市民とやっかい払いに送り込まれた下層市民を中心 に信奉されていた。社会的恩恵の少ないカリ派はハ ラ派に対して不満と怨念を深めていった。
 カリの神は破壊の神で、海進による津波を神格化 したもので、のちのシバ神の原型である。
一部のインテリ層を中心に、ハラ神とカリ神は本来同 一であるという哲学も生まれた。合体された神はアメ (中央)の神として崇拝された。
 のちのブラフマン神の原型である。

BC六千四百十九年アメの神を信仰する一派は千キ ロ離れた対岸のカンベイ湾のほとりにアメ国を作った 。
 主流派のハラ派と確執が生じたためである。

 BC六千三百八十年、ナーガ国では支配階級を中 心とするハラ派と下層市民を中心とするカリ派が深 刻な宗教対立を起こし、抗争の末にカリ派が勝利を 納めた。
 文民政治に不満を持つ軍人達がカリ派を支持した ためだった。
 御子を支持していたグループはあらかたハラ派だ ったので、ナーガ国は御子の勢力から独立し、名称 も「カーリー国」と改めた。
ハラ派の敗残者達の中で漁労関係者達と林業関係 者・建築業者は船でアメ国に移住することが許され た。
 知識人を中心に作られたアメ国は建設当初から技 能者不足に悩んでおり、とりわけ海運の停滞と食肉 の供給不足は深刻な状態だった。
その他の一般市民や政治家・商人は以前の確執か らアメ国への移住を拒絶された。
やむなく彼らはアメ国から九百キロほど北上して、イ ンダス川の支流にあった藺草蛇(イクグイ)の町へ移 住した。
 小さな町だったが、もともとハラ派の移住者が作っ た植民都市だったので受け入れられた。
アメ国の最高権力者はアメの神を祭る神官「アメの 御中主(ミナカヌシ)」だった。
 ナーガ国から移住した新住民は、山間に入り杣人 になる者、町に残り職人になる者、漁労に就く者に 分かれた。
 当時の漁法はカヌーによる一本釣りが主流だった が、構造帆船による刺し網漁もすでに行われていた 。カヌーや構造船のキール・マストになる巨木は杣人 から供給された。

BC五千六百年期になると、アスカ人を苦しめた海進 も終わり、海は少しずつ後退していった。
 この頃漁民の間で巨木に対する信仰が生まれた。
 自分達の生活の糧であるカヌーを生み出す巨木の 神を「高木の神」と呼んだ。
神官は高木の神と結ぶ者という意味で「高木結(タカ キムスヒ)」と呼ばれた。その内に、本来別種である のハラ信仰と高木信仰とが混合し、高木の神は太 陽の化身であり、高木結は御子であるという観念が 生まれた。
 本来の御子は依然ニライカナイの地に存在したが 、度重なる洪水や干ばつによって、ニライカナイは衰 退していた。
 アスカ人の中でも本家の地位は失落しており、そ の土地の権力者が勝手に御子や日子を自称するよ うになった。
注: 文字用の領域がありません!




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